シリーズ連載記事です。できれば第1話からどうぞ。
■目次
石との闘い
第1話 発病篇 石との闘い
第2話 診察篇 石との闘い 第3話 検査篇(前) 当記事
石との闘い
第4話 検査篇(後) 石との闘い
第5話 治療篇【医療エッセイ】石との闘い(第3話/全5話) 検査篇(前)
「尿はたまってますか?」
受付の看護婦さんはにこやかに言った。
「お嬢さん、若い女性のセリフじゃないぜ、そいつは。」
とニヒルに返事をする代わりに、私は
「い、いえ、あんまり。」
とへどもど答えた。
私は尿管結石の精密検査をしに、病院に来ていた。
超音波検査センターという場所である。
ここで腎臓とボウコウのエコー検査を受けるのが目的だ。
エコーというのは超音波を体に当て、その反射音を分析することによって、体内のおよその状況を画像化する装置である。
潜水艦のアクティブソナーに似ている。
レントゲンとちがって害が無いため、最近では胎児の状況を知るためによく使われているらしい。
「尿がある程度たまっていませんと検査ができませんので、
お水を飲んで、たまったな、と感じたらお声をおかけください。」
看護婦さんはあくまでもにこやかだった。
ある程度、ってどれくらいだろう?
ちょっとしたいかな、くらいでいいんだろうか?
もう少しで漏れそうなくらい必要なんだろうか?
そんな素朴で深刻なギモンも、看護婦さんの笑顔の前では口に出すのがはばかられた。
私はあいまいにうなづき、水を飲みに行った。
ふと見ると「腎臓・ぼうこうのエコー検査を受ける方へ」という貼り紙に、看護婦さんに言われた注意がそのまま書いてあった。
しっかり読んで、あらかじめ尿をためておけばよかった、と唇をかんだ。
◇
尿をためてはいけない、という状況はよくある。
だが、尿をためなければいけないという状況は、人生の中でそう多くはない。
私は手探り状態で尿をためていた。
ボウコウに意識を集中しすぎているせいで、わけが分からなくなっていた。
たまっていると言えば、たまっているような気がするし、たまっていないと言えば、まったくたまっていない気もする。
時々下腹部を押してみたりするが、謎は深まるばかりである。
水を飲みに行ってから小1時間。
ボウコウがせつなくなった。ような気がした。
よし。検査を始めてもらおう。
ここで、はたと私は悩んだ。
看護婦さんに何と声をかければよいだろう?
「尿たまりました。」……ストレートすぎ。
まるで「冷麺はじめました」のようだ。
もっと日本語らしい婉曲な表現が望ましい。
「バッチリです。いつでもいけます。」……さわやかすぎ。
肩の温まったリリーフ投手ではないのだ。
ボウコウ検査にそこまで積極的にはなれない。
「ボウコウが検査に適した状態になったようです。」……場慣れしすぎ。
いつの間にそんな訳知り患者になったのだ。
もう少しビギナーらしい初々しさをそこはかとなく漂わせたい。
悩んでいたら、ボウコウが本格的にせつなくなってきた。
まずい。たまりすぎてしまう。
あわてて受付に駆け寄った。
「あの、いけそうなんで、お願いします。」
<つづく>
【正解発表】-----------------------------------------
1号で出題した
「輝け!!ニコル&エリック大王クイズ」の正解発表です。
第1問)C・W・ニコルのC・Wの意味は?
Clive Williams Nicolの略です。
第2問)E・H・エリックのE・Hの意味は?
Eは、エリックのE。
Hは「日劇ミュージックホール」のH。
H……? ホール……?
念のために言っておきますが、マジです。
彼の自伝『元祖「ヘンな外人!」』に書いてあるそうです。
つまり彼のフルネームは
「エリック・日劇ミュージックホール・エリック」。
……なんじゃそりゃあ……。
ちなみに彼は岡田真澄の実兄で本名は岡田泰美(たいび)。
堺正章夫人であった岡田美里の実父。
平成12年8月18日に米ハワイ・マウイ島でパーキンソン病のため死去。71歳でした。
■目次
石との闘い
第1話 発病篇 石との闘い
第2話 診察篇 石との闘い 第3話 検査篇(前) 当記事
石との闘い
第4話 検査篇(後) 石との闘い
第5話 治療篇
posted by ゴンザ at 15:50| 静岡

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