2004年11月22日

【医療エッセイ】1-1『輪切りの私』

※これはゴンザが2年前に体験した医療の現場についての連載レポートです。できれば過去の記事からご覧下さい。


◆記事目次◆
1-1)『輪切りの私』(当記事)
1-2)『白衣の天使は実在するか?』
1-3)『センセイになった日』
1-4)『こうじょうせん途中下車の旅』
1-5)『オープン・ザ・医療』
1-6)『4つの管』


私は半口開けて、「MRIとは?」なる案内板を眺めていた。
ここは病院の一角である。

首筋に出来た小さなしこりに気づいたのは3年ほど前だった。
痛いわけでも、熱が出るわけでもなく、特に不都合がなかったため放っておいたのだが、風邪をひいて医者に行った時、ついでに軽く相談してみた。

すると、威勢のいい女医さんに
「こういうのはね、ちゃんと調べとかなきゃダメ!」
と怒られ、しぶしぶ有給休暇をつぶしての検査に至ったのである。

しこりの正体を確かめるべく、病院でCTスキャン・エコーなどの検査を続けてきた私の次なる相手が、この未知なるハイテク・MRIなるものなのである。

┏【医療な言葉:MRI】┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳
┣ Magnetic Resonance Imaging(磁気共鳴画像)

┣ ドラマの病院シーンでよく見る「人体の輪切り画像」を撮る装置。
┣ 強い磁場の中に置いた人体に、一定周波数の電波を当てると、
┣ 体内の水・脂肪に含まれる『水素原子核』が共鳴し、一定方向を向く。
┣ 電波を切るとばらばらの方向へと戻るが、
┣ その際に細胞組織によって異なる微弱な電波を生ずる。
┣ MRIはその電波を解析して体内の状況を画像化する技術である。
┣ 似たような「輪切り検査」にCTスキャンがあるが、
┣ CTはX線検査の1つであるため、人体に悪影響がある。
┣ MRIの電磁波は現在「有害である」という証明はされていない。
┣ しかし、「無害である」という証明もされていない。

┗┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻

……むむう。
磁気と電波によって、水にエネルギーをかける……。
それって、電子レンジでチンされる、ということだろうか?
「指輪など金属類はお外しください。」と注意書きがあるのも、電子レンジとアルミホイルの関係を彷彿とさせる。
大丈夫なんだろうか。

名前を呼ばれた私は、びゅーびゅーと臆病風に吹かれながら入室した。

    ◇

MRIは、白くて、長くて、大きかった。
オフホワイトのでかい機械に、土管のような筒状の穴が開いていて、その前に寝台が
「いらっしゃいませこんにちは!」
とばかりにスタンバっている。

私はTシャツとパンツ姿になり、
その上からハッピを長くしたような検査着を羽織った。
検査着の下からにょっきり出ている黒い靴下がラブリィだ。

寝台におずおず近づくと、看護婦さんが「あ、これを」と何かくれた。

……なにこれ、耳栓?

「こちらの機械、検査中うるさいんで、これを入れてください。
 入れてもけっこううるさいんですけどね。」
看護婦さんは、あははと笑った。
つられて私も、はははと笑った。

耳栓を入れると看護婦さんがうれしげに「どうですかー?」と聞いてくる。
思ったよりもちゃんと聞こえるので、笑顔でうなずき返した。

看護婦さんとの友好度はアップしたが、耳栓への信頼度はダウンした。

「はいここに仰向けに寝てください首はここ
 もちょっと上かなそうそういいですねはい固定しますねー」

何が何やらわからないうちに、おでことあごの部分が、ベルトのようなもので固定されてしまった。
つかまった宇宙人の気分だ。

下半身にタオルケットをかけられて、いよいよ検査である。
寝台がするすると、そしてゆっくりと白い穴に近づいていく。

♪たったかたーたかたったたったかたったったー

私は頭の中で「サンダーバードのテーマ」を鳴り響かせながら、MRIの穴の中に入っていった。

 ◇

(せまっ!)
MRIの内部に入った私の感想である。

想像以上に狭い。
筒の中は人一人がやっと入れるくらいのスペースしかない。
パパイヤ鈴木は入れないかもしれない。

鼻先5センチくらいのところに天井がある。
ものすごい圧迫感。
閉所恐怖症の人間には到底耐えられないだろう。
棺おけに入れられた気分だ。

「はーいそれじゃ検査始めますよー。」
筒の中にあるらしいスピーカーから、技師さんの声が聞こえる。
「もし気分が悪くなったりしたら、これを握ってください。」
とゴム製のレモン形のものを、右手につかまされた。
血圧を測る時に空気を入れる「しゅぽしゅぽ」と同じようなものらしい。
もっとわかりやすく言えば
「カエルがぴょんと跳ぶおもちゃのしゅぽしゅぽ部分」である。

……これを握ると、どのようなことが起こるのだろう?
まさか「握ると安心」という癒し系グッズではあるまい。
おそらく機器のランプが付くなり、音がするなりして、「どうしました?」と技師さんと看護婦さんが来てくれるのだろう。

だが、私の頭の中には、
「握ると『ぷぴー』という音とともに私の足元でカエルがぴょんと跳び、
 それを眺めてほのぼのと笑う技師さんと看護婦さん」
という絵しか浮かんでは来なかった。

ガンガンガンガンガンガンガンガンガン。
ごいんごいんごいんごいん。
ガッガッガッガッガッガッガッガッガ。

……なるほど、看護婦さんの言葉は正しかった。
とてもうるさい。
筒の周りからまんべんなく騒音がする。
工事現場の金属管にもぐり込んで出られなくなった猫の気分だ。

15分ほどのヘヴィメタルな時間が過ぎた後、突然音が止まった。
スピーカーから技師さんの声。
「いったんお休みしますねー。楽にしてくださーい。」

いや、そんなインターバルいらんから。
ぎちぎちの筒の中に「気をつけ」の姿勢で入れられて、おでことあごをベルトで固定されて、鼻の頭をかくのを我慢している男に、どういう顔して「楽にしてくださーい」と言っとるんだあんたは。

検査再開。
ガッガッガッガッガッガッガッガッガ。
ゴンゴンゴンゴンゴン……
ごいんごいんごいんごいん……

「はい、おわりでーす。お疲れ様でしたー。」
技師さんの声に私ははっと我に返った。自分でも信じられないことだが、私は寝ていた。
あの状況下で。
人間の適応性というのは、げにすばらしいものである。

足にかけたタオルケットをとると、私はびっしょりと汗をかいていた。
それこそ、湯気が出るくらいに。

「暑かったですか?たまにそういう方いらっしゃるんですけど。」
首をかしげる看護婦さんにうなづきつつ、私は思った。

やっぱりこれ、電子レンジだ。

【つづく】

◆記事目次◆
1-1)『輪切りの私』(当記事)
1-2)『白衣の天使は実在するか?』
1-3)『センセイになった日』
1-4)『こうじょうせん途中下車の旅』
1-5)『オープン・ザ・医療』
1-6)『4つの管』

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posted by ゴンザ at 17:08 | 静岡 ☁ | Comment(5) | TrackBack(0) | 医療エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
“MRI”私はまだ未経験ですが、数年前に経験した人の話では「(看護婦さんは眠ったほうが楽ですよ〜と言うけれど)絶対にあんなところでは眠れない!!押しつぶされそうな恐怖・・」とのことでした。そんな状況の中で寝汗?をかいて眠れるあなたはやっぱり大物!
もしかしたら入院&手術中 びっくり体験の連続だったのでしょうか???
続きがとても気になります。。。

Posted by Yogi at 2004年11月24日 01:08
どーも、大物です。

自分では自分のことを小心者だと思っているのですが、周りからは「外見からは想像もつかないほど図太い」と言われます。そんな……照れるなぁ。

入院&手術は、じみーなびっくり体験が多かったです。ちょっと役立つ医療情報も交えつつ、またぽつぽつ掲載しますねー。
Posted by ゴンザ at 2004年11月25日 15:34
私も経験あります!MRI。
元々、入院とか検査とか縁遠い私は、かなり浮かれてました。「何するの?どうするの?」みたいに…
確かにうるさかったですね…
でも、私も途中で記憶がないから…多分寝てしまったのかも。
Posted by mika at 2004年12月02日 11:13
ようこそ、大物2号のmikaさん。

うるさいはうるさいんですが、あれ、けっこう一定のリズムでうるさいんで、慣れてくると頭がぼーっとしてくるというか、トリップしてくるというか……ますますヤバそうじゃん。

ゴンザの会社の先輩もMRIをやったことがある、というものですから、「なんでMRIなんかを?」と聞いたら、

「いや、最近物忘れが激しいんで不安になって脳の検査をしてもらってさ……」

……あー。聞かないほうがよかったかなー。思ってたよりしゃれにならない理由だなー。

結局、脳には異常はなく、「忙しすぎると、そういう風になることがありますよ。」と医者に言われたそうです。
Posted by ゴンザ at 2004年12月03日 20:34
4度目のMRI体験してきました。
胸部と腰の2ヶ所だったので50分近くかかったのですが今回もまたいびきをかきながら寝てしまいました。前日の睡眠時間が4時間だったのであのカタカタという音が子守唄のように聞こえたのです。
Posted by ミヨミヨ at 2007年02月17日 19:46
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