2004年12月03日

【医療エッセイ】1-2『白衣の天使は実在するか?』

※これはゴンザが2年前に体験した医療の現場についての連載レポートです。できれば過去の記事からご覧下さい。


◆記事目次◆
1-1)『輪切りの私』
1-2)『白衣の天使は実在するか?』(当記事)
1-3)『センセイになった日』
1-4)『こうじょうせん途中下車の旅』
1-5)『オープン・ザ・医療』
1-6)『4つの管』
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結局、私は入院することになった。

CTスキャンやエコー、細胞診、MRIなどの検査の末、
「結核による腫れの疑いが強いが、確定させるため組織採取を行う」
ということだった。
つまりは首のしこりを、1センチ四方程度切り取って、顕微鏡で見てみましょう、というわけだ。

そんな人の身体をサイコロステーキみたいに、と思ったが仕方がない。
その夏の終わりは病院で過ごすこととなった。

切る部位が比較的首の表面のほうだったので、手術自体はどうということもなかった。
ダメージも深くなく、3日もすればヒマを持て余した。
そこで病院内を観察することにした。

観察の主たる対象は「白衣の天使」である。

  ◇

白衣の天使。
言うまでもなく看護婦さんのキャッチフレーズだ。

もっともこの「看護婦」という呼称自体、一種の愛称である。
現在、正確には「看護師」という。

┏【医療な言葉:看護師(かんごし)】┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳

┣ 以前は女性の看護エキスパートは「看護婦」、
┣ 男性の看護エキスパートは「看護士」と呼ばれていた。

┣ 男性看護士の占める割合は現在およそ5%程度。
┣ 看護の現場は、高度な知識を要する専門職の世界であるが、
┣ 物理的な筋力が不可欠となる場面も多く、
┣ 男性看護士の必要性は昨今重視されてきている。

┣ そんな中、ジェンダーフリーの面、呼称の利便性の面などから、
┣ 共通した呼称をもつべきである、という動きが起き、
┣ 平成13年12月に成立した保健婦助産婦看護婦法改正により、
┣ 男女の区別なく『看護師』と呼ばれるようになった。

┗┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻

それはさておき、「白衣の天使」はやはり男性入院患者にとっての夢であり、漢の浪漫である。

純白の衣に身をつつみ、回診表を胸の前に抱え、「いかがですか?」とやわらかく微笑む妙齢のあたたかな女性。
漢というものは、そんな自分の中で作り上げた情景に、臆面もなくソフトフォーカスをかけてしまったりするのだ。

しかし、敢えて言おう。
「白衣の天使」は想像上の生物だ。
龍や麒麟、ユニコーンやペガサス、NOVAうさぎのようなものだ。

「白衣の天使」を探して病棟内を見回したあなたが見つけるのは、「白い服着た体育会系ゴーカイねえちゃん」である。

ベッドで横になっていると、ゴーカイねえちゃんは、ぱたぱたぱたと早足でやってくる。
そしてこちらを見て、にっと笑い、開口一番言う。

「おしっこ出た? 何回?」

嗚呼、天使はいずこ?

実際の看護婦さんというのは、その夢のイメージとは違って、みなさん豪放磊落で男前な人々なのである。
「あはははは!」と色んなことを笑い飛ばせる元気な肉体労働者なのである。


しばらく入院していて感じたのだが、看護婦さんの言葉使いというのは独特だ。

「ご飯食べた〜? うん、全部食べたね〜。えらいっ。」

「お風呂入る? 先生いいって言ってた?」

「おしっこは出た? 何回? お通じは? お熱、はかった?」

どう考えても同年輩、もしくは年下と思しき女性からこのような言葉をかけられ、私は
「はい、7回と1回です。おかげさまで36度4分でした。」
と神妙に答えているわけだ。

想像するに、

・適度にフレンドリーな口調。
・年代を超えて通用する共通の語り口。
・相手に恥ずかしいと思わせない空気。

というものを追求していった結果、幼稚園児に話し掛けるようなあの言葉使いが出来たのだろう。

看護婦さんというのは、つくづく大変な職業だと思う。
過酷な肉体労働であり、高度な知的労働である。
汚れ物を扱いつつ、生死をも扱う責任の重い仕事である。
精神的にかなり骨太でないとやっていけない。

そして、入院患者というのは、わがままな存在だ。
普段わがままでない人も、不安からわがままになりがちだし、普段わがままな人はそのわがままっぷりがパワーアップする。

ボタンを押すとナースステーションに通報がいく「ナースコール」というものがあるが、私の近くの病室には、この文明の利器を使うことを頑なに拒否する迷惑なオッサンがいた。
と言っても「呼ばずに我慢する」のではない。
そんなかわいい患者ではない。

深夜。寝静まる病棟内に、突然ダミ声が響き渡る。
「看護婦さぁーん! 看護婦さはぁーん!」

……なんでやねん。

パタパタパタと駆けつけるスリッポンの足音を聞きながら想像する。

「あたしたちゃアンタのお母さんじゃないっつうの!」
とか思っているんだろうな。
場合によっては叱りつけているんだろうな。
オッサン、アンタが悪い。いいかげんにしとき。
それだけでかい声がでりゃ、大丈夫だろ。

付き合っていられないので、
ごそごそと枕を直してから寝なおすことにする。
パタパタという足音が近づいてくる。
ああ……オッサンのところから戻ってきたのかな……
と思っていると、懐中電灯の光とともに声をかけられた。
「どうしました?」

へ? な、なにが?

嫌な予感に襲われて枕元を見ると、ナースコールが転がっていた。
……やばい。枕を直した時にうっかり押してしまったらしい。
えーとえーとえーと……。

「……寝づらいんで、ちょっとベッド起こしてもらえます?」
「はい。」
看護婦さんは嫌な顔ひとつせずにベッドの角度をくるくると上げ、「これくらいでいい?」とにっこり戻っていった。

明らかにさっきより寝づらい角度になってしまった
ベッドの上をずり落ちながら、私は思った。

やはり白衣の天使は実在するのだ。

【つづく】

◆記事目次◆
1-1)『輪切りの私』
1-2)『白衣の天使は実在するか?』(当記事)
1-3)『センセイになった日』
1-4)『こうじょうせん途中下車の旅』
1-5)『オープン・ザ・医療』
1-6)『4つの管』


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posted by ゴンザ at 20:41 | 静岡 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | 医療エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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