2004年12月08日

【文芸】ゴザンス800字『新・かさこじぞう』

ゴンザのゴザンス投稿作品を振り返るシリーズの第3回目です。ゴンザとゴザンスの関係について知らない方はこちらをご覧くださいませ。

今回は800字小説。出された3つのお題を織り込んで、800字以内でお話を作るものです。編集部が提示したお題は[クリスマスに/教会で/C.サンダースが]でした。

----------------------------------------------
【800字】新・かさこじぞう (2003-12-15 14:08:33)
text: ゴンザ

<お題:クリスマスに/教会で/C.サンダースが>

 女ってのは、どうしてああ鋭いんだろう?

 僕はマフラーを見下ろしてため息をついた。確かに前の彼女にもらったマフラーをして、デートに出かけてしまった僕がバカだった。それは認める。でも、どうしてちらっと見ただけで、そこまで見抜くことができるんだろう?

 わからない。わかっているのは、イブに独りで家路についている僕の悲しい現状だけだ。

 かすかに聖歌が聞こえた。ここは教会の裏手だったっけ。何げなくそちらに目を向けると、見知った笑顔に出会った。サンタの衣装を着たケンタッキーおじさんが、教会の裏口にぽつんとたたずんでいた。

 僕とカーネルはしばし見つめあった。本当ならここにいないはずの2人だ。クリスマスには奇跡が起きる。

 酔っ払った学生あたりが拉致してきたのだな、と頭を振る。暗がりの彼は寒そうに見えた。僕はひとつため息をつき、失敗の元凶であるマフラーを彼の首にくるりと巻くと、首をすくめてアパートまでの道を走った。

 その夜、夢を見た。
 
 空には月。雪明りにぼんやり照らされた道をえっちらおっちらやってくるひとつの影。あれはカーネル・サンダースだ。僕が巻いたマフラーをしている。ケンタッキーおじさんは僕の部屋の前に止まり、どさりと何かを降ろしていった。そしてえっちらおっちら帰っていく。

 ドアチャイムの音で目が覚めた。不思議にすっきりした頭でドアを開けると、外には誰もいなかった。雪が積もっていた。ふと目を落とすとドアの脇に何か置いてあった。……パーティ・バーレル? まさか!
 もう一つ紙袋がある。開けてみるとマフラーが入っていた。カーネルにあげた物ではない、新しいマフラー。

 ふいにおかしくなった。くつくつと笑いがこみ上げてくる。こらえきれなくなって、僕は大声で笑った。廊下の角に隠れていたらしい彼女が、目を丸くしてこちらを見ていた。それを見て、もっとおかしくなって僕は笑った。

 サンキュー、カーネル。うまく仲直りできそうだ。

【終わり】
----------------------------------------------

<自分で解説>

この作品はゴザンスが発行する公式のメールマガジンに全文を掲載してもらえました。単純に1等賞!というわけではないにせよ、少なくとも寄せられた作品の中で評価が高かった、ということで、正直うれしかったです。

「教会で」というのをきちんと守ると発想が狭まってしまいそうだし、第一、入ったこともない教会なんか描きようもなかったので、さくっと教会の外で済ませてしまいました。

発想の元になっているのは、普通に「まんが日本むかしばなし」のかさこじぞう。雪の中をえっちらおっちらやってくるおじぞうさん、という光景が頭にこびりついています。そのイメージに、よく噂に聞く「カーネル誘拐」を組み合わせて作り上げた「現代版のかさこじぞう」なわけです。
昔、阪神が優勝したときにカーネル人形が担ぎ出され、道頓堀に投げ落とされたことがありましたよね。聞いた話では、それ以後カーネル拉致というイタズラが増え、そのせいで今のカーネルには鎖&固定具などの盗難防止対策がとられているとかいないとか。持ち上げてみようとした友人によれば、けっこう重くて、誘拐するにはかなり綿密な計画を立てる必要があるそうです。(立てるな立てるな)

もひとつ、大きく影響しているのが、加納朋子さんの小説『掌の中の小鳥』。

これ、ゴンザがとても好きな作品です。基本的には推理小説なのですが、殺人などは起きない、日常の不思議な出来事をあつかった叙述型ミステリ。加納朋子さんは、よく北村薫氏と同系統の作家として紹介されますね。
言葉のパズル的な謎の作りこみには、なるほど!と感心しますし、ミステリ抜きの短編小説、ライトタッチの恋愛小説としても秀逸です。

そしてこの作品で、格別の光を放っているのがヒロインのキャラクター。自由奔放でややわがままながらも、生き生きとしていてとても魅力的です。加納朋子さんが「自分が男だったらぜったい惚れてしまう女の子を描いた」というだけのことはあります。女性が描く女性はやはり面白いですね。

で、この本に、主人公が他の女の子にもらったネクタイをしめてきたことに怒り、彼女がデートから帰ってしまうというお話があります。そして主人公は「なぜバレたんだろう?」と途方にくれる。……こりゃ設定としてはほとんどパクってしまってますね。

まー、なんにせよ、この『掌の中の小鳥』、とっても面白いのでぜひ読んでみてください。

ところで、この「新・かさこじぞう」の最後に出てくる新しいマフラーの意味は、書いたゴンザ自身もはっきり定めてません。

「彼女」はプレゼントとしてマフラーをあらかじめ用意していたのかもしれません。ひょっとしたら手編みかも。で、いざ「彼」と会ったら、どう見ても「彼」が自分で買ったとは思えないようなマフラーをしている。いかにも女性が選んでくれたような。それでカチンときた。

あるいは、会ったときは他のプレゼントを用意してきたけれど、そんなマフラーをしていたものだから、ケンカ別れの後、少し気持ちを落ち着けてから、あえて新しいマフラーを買ってきた。「そんなの巻かないで、あたしのあげたのをしなさいよ!」と。

ぼんやりしてそうな「彼」が過ごした夜と、気の強そうな「彼女」が過ごした夜。「彼女」はどんなことを考えながら、パーティバーレルとマフラーを抱えて、朝早くに彼の家までやってきたのか。
そしてピンポンダッシュ後、廊下の角に隠れていたときの気持ち。笑い声が聞こえてきたときの驚き。

そのあたりに想像をめぐらせてみるのも一興かと。

……自分の書いた作品に対し、私もよく言うもんだ……。

▼1クリックで救える魂がある!▼(私の魂です)
拍手する   にほんブログ村 地域生活(街) 中部ブログ 静岡(市)情報へ



posted by ゴンザ at 17:36 | 静岡 ☁ | Comment(2) | TrackBack(0) | 文芸 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
すごいなぁ〜800字小説って…
ちゃ〜んと光景が浮かびますもんね…
探してみます「掌の中の小鳥」
本を読むのは好きなのですが、買う時はいつも思いつき…
目に付いたものを買ってる状態なので…
Posted by mika at 2004年12月09日 12:55
加納朋子さん、オススメです。

「掌の中の小鳥」では、最初のほうで出てくる「ヒロインの名前を当てる」という言葉遊びのような推理に「なるほど、こういう書き方もあるのか……」と感心してしまいました。

もし加納朋子さんを気にいったのなら、北村薫氏の「円紫さんと私」シリーズの『空飛ぶ馬[ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4488413013/gonza-22 ]とか、恩田陸さんの『象と耳鳴り』[ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4396330901/gonza-22 ]なんかも読んでみると吉です。
Posted by ゴンザ at 2004年12月09日 17:09
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/1232768
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック