2006年03月19日

【医療エッセイ】石との闘いR(第3話/全4話) 衝撃篇(後)

この記事はシリーズ連載です。できれば最初の記事からどうぞ。

前回シリーズ『石との闘い

■『石との闘いR』目次
 石との闘いR 第1話 発症篇
 石との闘いR 第2話 衝撃篇(前)
 石との闘いR 第3話 衝撃篇(後)当記事
 石との闘いR 第4話 成果篇


点滴スタンドをお供に「破砕室」につくと、奥から医者がひょいと顔をのぞかせて会釈した。

しれっとした顔のしれっとした医者はしれっとした口調で言った。

「立派な石をお持ちで。」

テンションの高いときの私なら、この小粋な泌尿器科ジョークに、
「ほほほほほ。大したことござあませんのよほんの1.5カラット。」
と応じることが出来たかもしれない。
だが今はそんな余裕はない。

「はあ、どうも。」
もそもそ答えると、しれっとした医者は、ジョークがスベったことを気にした風もなく、こくんと頷いた。
このジョークでは、スベり慣れているのかもしれない。

さっそく手術台の上に乗せられる。
真中片側がぽっかり欠けた高いベッドという感じの手術台だ。

衝撃波結石破砕装置

仰向けに寝ると、その欠けた部分に腰が来る。
おしりと背中で身体を支えて、腰は宙に浮いている形になる。
そして、横から衝撃波を発する機械が入り込む。
腰の下からぐにゃりとした透明の半球が押し付けられ、上からはなにやら円筒状のものが見下ろす。

こんなもので、体内のミリ単位の石に焦点をあわせて、
それを砕くほどの衝撃波を当てることができるのかー。
すごいなー。
…………。

……本当にできんのか?

にわかに科学技術に対して懐疑的になった私に、医者が言った。
「はい、行きますよー。ちょっとバチッと来ますよー。」

バチッ!

たしかに。

衝撃波を浴びたことのない人のために、レポートしよう。
痛さは「重い電気ショック」といったところだ。
静電気でバチッとくる感覚に、少し深みを加えてビターな味わい。

痛いか痛くないか聞かれたら、私は答える。
痛い、と。
痛いに決まってんだろ、と。

だいたい1秒に2回くらいのペースで、バンッ!バンッ!
という音とともに衝撃波が当てられる。
一撃ごとの痛さは、それほどでもない。
ただ、連打なので、痛みが徐々にたまっていく気がする。

5分ほどボディブローをくらい続けると、急に痛みが軽くなってきた。

なんにでも慣れというのはあるものだ。
そのうちコレも気持ちよくなってくるのかもしれない。
それはとてもイヤなことだけれど。

などと一息ついていると、医者が急に装置を止めた。
「急に軽くなりませんでした?」
……慣れではなかったらしい。

医者は私を一旦ベッドからどかせて、装置をいじり始めた。
どうやら、装置の中の消耗部品が磨耗していたようだ。
医者は得意げに言った。
「機械が正月ボケしてたみたいでね。いま新品のに交換しましたから。」
 
……えーと。ここ喜ばなきゃいけないとこ?

目の前で数撃の試運転をしてくれた。
腰に当てるバレーボール大の透明な半球の中に、バチッと派手な電撃が走った。
まさしく稲妻。

こんなもん当てられとったんか俺は。

バチッ!バチッ!

リフレッシュした稲妻製造機は、とてもイキが良くなっていた。
さっきより、痛い。新品おそるべし。
衝撃波を当てながら、当てる方向や位置が微妙にずらされるのだが、この角度によってずんと痛くなる。
腰骨に響くような角度に来たりすると、かなり痛い。

気を紛らわせないと、やっていられない。
他のことを考えよう。そうだ。こういう時は九九だ。

(いんいちがいち。いんにがに。いんさんがさん。いんしが……)

基本に立ち返り、一の段から。

(さぶろくじゅうはち、さんしちにじゅういち、さんぱにじゅう……はち?)

小学校2年生2学期レベルの間違いをしつつ、九九を何度も繰り返した。
延々30分くらいの間、九九をループ。なにがなんだかわからなくなってくる。
ようやく「はい、お疲れ様でしたー。」機械が止まった。

「痛かったですか?」と聞いてもしょうがないことを聞く医者に、へへっと半笑いで答えながら、私は手術台を降りた。

ありがとう。先生のおかげで苦手な七の段もバッチリさ。

<つづく>

■『石との闘いR』目次
 石との闘いR 第1話 発症篇
 石との闘いR 第2話 衝撃篇(前)
 石との闘いR 第3話 衝撃篇(後) 当記事
 石との闘いR 第4話 成果篇


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posted by ゴンザ at 12:00 | 静岡 ☁ | Comment(2) | TrackBack(0) | 医療エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
あらら…
急に衝撃が軽くなった=治療終了かと思いきや…
試運転を見れたのは、ラッキーだったんですかね?
普通は、見ることないでしょうし…
いや、あまり見たくないような気も…
Posted by mika at 2006年03月19日 23:16
バッチーィィィン!となかなかな光景でしたよあれは。もうね、あんまり健康には自信の無いゴンザは、何を見ても「ネタになる」というような観点で見ちゃうようになりました。まー、それくらいでないと、病院は楽しめないからねえ。
Posted by ゴンザ at 2006年03月23日 00:11
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