さて、前回の記事では、私が静岡市街から5時間以上かけて、飯田線の秘境駅「小和田」までたどり着いたところまでリポートしました。今回は後編となりますので、まだ前編を読んでいない方は先にこちらの記事をどうぞ。
⇒ 小和田に行ってみる(前編)

小和田だー! 静岡県の端っこだー!
隣の勇ましい名前の駅「中井侍(なかいさむらい)」はすでに長野県です。そして小和田駅の外に広がる

川の向こうは、すぐ愛知県です。
それを示す看板が駅のホームに立っていました。


このとおりです。
こちらが駅舎。言うまでもなくバリバリの無人駅です。

一応雨露はしのげる様になっているので、いわゆる「駅寝」も可能です。

水道もあるな、とおもったらちょろちょろ水が出しっぱなしになっています。見ると

この水はとめないでくださいの貼り紙。どうやら凍結防止に流されているようです。
ところで、この小和田駅、しばらく前に一躍脚光を浴びたことがあります。それは現皇太子妃雅子さまご成婚のころ。雅子妃の旧姓は「小和田(おわだ)」でしたね。読みこそ違いますが、それにあやかってここを訪れる観光客が1993年ころには多かったそうです。
そのエピソードを示すのが、ホームに立てられた

「恋成就駅小和田」の札。恋が実るんですってよ、お嬢さんたち!
臨時で運行されたらしい小和田花嫁号のエンブレム。


皇室のご成婚にあやかって行われたらしい、結婚式の写真。

これは、駅舎内に飾られています。いわゆる「若気の至り」ですね。このカップルはいまどうなさっているんでしょう。
また、駅舎を出てすぐのところにこのような

森林公園内のあずまやのような建物があり、その中には

「小和田発ラブストーリー・愛・お二人の幸せを呼ぶ椅子」なるものが鎮座しています。なるほど……ここがカップルの記念撮影場所として栄えた往時を偲ばせます。
しかし今は、

一時は隆盛を誇ったであろう自動販売機が、「Drink Up!」の文字もむなしく空っぽで放置されています。
あ。念のため申し上げておきますが、この駅に行ってみようと思う方はちゃんと食べ物と飲み物を用意していってくださいね? 本当に何もないところなんですよ?
駅のトイレもご覧のとおりで、謎の虫が中をうろついていましたし、

列車も2時間に1本程度なので、トイレは車内で済ませたほうがよいでしょう。

さて、さきほどの「愛のあずまや」を出て駅周辺を散策してみます。

下る……。

おっ。神社が徒歩5分。行ってみましょう。
途中

小川を飛び越えたりしつつ、がんばって歩きます。しかし、足元が悪いです。「道……か?」とかろうじて思えるようなケモノ道です。
もう歩き始めて5分経ったんじゃないだろうか、ホントに神社なんかあるのだろうか、そもそもこの世に神はいるのだろうか、と深遠なる懐疑論を抱き始めたあたりで、

あっ。林の向こうになんか見えた!

ありました! 小和田池之神社です! ほんっとに何もないところなので、こんな祠ひとつ見つけただけでも十分テンションあがります。

中を覗き込む私。とくになんもありませんでした。
ここに来るまでの道のり、というか駅の周りは完全に湖っぽい広さの川幅の天竜川。なかなかの絶景です。


うぉぉぉぉ! 秘境だぜー!

おやじー! 俺はここまで来たぜー!
さあ、ひとりでさみしくはしゃぐのはやめて、とっとと戻ります。駅まで戻ると、

「塩沢集落」まで40分の立て札。……こんな道なき山の中で、往復1時間半ちかくかかるところを目指すのは無謀です。遭難するぞ。

およそ25分で行けるという高瀬橋を目指します。調べたところでは、先ほどから出てくる天竜川の対岸まで架かる吊橋なのですが、橋向こうの集落が無くなってしまったため、すっかり荒れ果てているらしいです。

荒れ果てた橋を見るために、道なき道を必死に歩く。無駄なことを全力でやっている感覚がやけに心地よいです。

道の左側はがけのような斜面に、杉の木がたくさん植わっています。

これ、道です。っていうか、自分でも道の定義とは何か、考えながら歩いています。倒木をかいくぐってなおも進みます。
とつぜんなにか人工物らしきものにたどり着きました。文明の香りです。

柱……? 高瀬橋か?

? ? ? ……これ、橋か?
先ほどの柱らしきものを確認すると

「たかせはし」。

「昭和三十二年一月竣工」。
やっぱりここが高瀬橋なのか……。よく見てみると、

若干、橋の残骸らしきものが……。想像以上の荒れっぷりです。でも、中途半端に渡れそうな橋じゃなくてよかったです。「がんばればなんとか……」みたいな橋だと、チャレンジしてみてこの記事を書くことなく遭難してしまったかもしれません。
疑いようのない行き止まりなので、これまでの道のりを戻り、今度は塩沢集落への道を行けるだけ行ってみます。途中


一軒、家らしきものがあり、人影があったような気がしましたが、なんとなく怖くなって深入りは避けました。
集落への道だけあって、今までの山道に比べると比較的整備されています。

橋。鉄橋みたいです。

揺れます。思い出しました。私、高所恐怖症でした。そしてこの橋の安全性はだれも保証してくれません。めっさこわなりました。橋を渡ったところで「もうやめよう……ここまでやれば、許してもらえるさ……」と、見えない誰かに許しを請いながら戻ることにしました。一度渡った橋をまた引き返すのが一番怖かったです。

坂。ここで気が抜けたのか、すっころびました。足腰弱ってます。
それにしても


絶景です。さすが、『ザ・ベストハウス123』で「一度は降りてみたい景色の美しい無人駅」1位にランキングされただけのことはあります。
ただし、景色がきれいなだけで、ほんっとーに何もないのでそれだけは覚悟の上で行ってください。

駅舎にもどりましたー。ここで他の「物好きなかたがた」と少し言葉を交わし、昼ごはんを食べて、13:35分発豊橋行きの電車に乗って帰りました。小和田、堪能しました。
当たり前のことですが、帰りも約5時間かかりました。そうなんですよ、私には帰りの道のりだってあるんですよ! 大変なんすからもう。
移動時間10時間。何もない駅に滞在2時間半。ほぼ日の出ている時間すべてを費やしました。時間と労力の無駄ですか?
否! 遊びとは、生産性のない時間と労力の無駄のことであり、最も人間らしい行為であると、誰か偉い人が言っていた、ような気がします。皆さんも話のタネに行ってみて下さい。
紅葉の時期が一番きれいかもしれません。ただし、「寒い! 帰れなくなった!」などというクレームは当方いっさい受け付けませんので、そのあたりよろしくお願いします。
<ゴンザ>
[2010.12.03追記]
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小和田駅周辺には一人だけ人が住んでいて、郵便局員や警察官も道路が通じないため、電車で小和田まで行って用事を済ませているそうです。たいへんですよね。
小ネタでした。
やっぱり私が見たあの家に住んでらっしゃる方がいるんですね。固定電話は通じるんでしょうか? 食糧や日用品の入手は? 宅配便は届くのか?
あそこでの生活は、もはや仙人の生活に近いかとおもいます。ただ、きれいなところではありました!