2011年02月08日

「うつ病は心の風邪」じゃない

昨日のNHK『クローズアップ現代』で、うつ病の認知行動療法にスポットが当てられていましたね。

現在の私だけを知っている人は、たぶん信じてくれないでしょうが、私は三十余年もの間、うつ病に苦しんだ人間です。

それこそ幼稚園児の頃から、ときおり理由もなくふさぎこみ、両親を心配させました。幸か不幸か、学校の成績だけはよかったので、問題を起こしつつも「テストの成績はいいから、まあいいだろう」と中学、高校、浪人、大学と進みました。私にとって学校の勉強は、頭にかかるモヤのようないつものやる気の無さがちょっと晴れたときに、やっつけ仕事でなんとかするものでしかありませんでした。

が、だましだましのそのやり方が、大学では通用しませんでした。出されるクイズに答えればよかった世界から、放り出された「自由」な世界に、私は途方にくれ、今でいう「引きこもり」になりました。ほぼ丸2年です。

心を痛めた両親に北里大学病院の精神科に連れて行かれましたが、まだその当時うつ病の研究は今ほど進んでおらず、たぶんアモキサンと思われる薬を言われるまま飲んでいました。しかし、まったく効かず、そのうち病院からも足が遠のきました。

その後、自然治癒のように学校に行けるようになって、どうにかゼミに参加し、7年かかって大学を卒業することができました。

就職も大変でした。就職氷河期に加えて、私は働くことへの熱意が無いまま就職活動を続けたので、ぐだぐだな状態でなんとかひっかかった今の会社に入りました。

数年は良かったのです。仲間にも恵まれ、それなりに楽しく仕事をしました。しかし2005年頃からおかしくなります。会社には出勤できるのですが、土日の休日、まったくなにもやる気がしません。そのうち、会社になんとしても行きたくない気持ちが湧き上がり、月に一回程度休むようになります。

そして、あるとき、もう限界に達します。外に出るのもイヤ。テレビもイヤ。音も光もキライ。布団をかぶって食事もとりたくない状態になります。会社から両親に連絡が行き、父母が助けに来てくれました。

そこから、迷走が始まります。どうやらうつ病だということで、3ヶ月の休みをもらいます。そして気が晴れたような気がして復職しますが、やはりすぐにダウン。これは本格的な治療が必要だと、休職して、実家の近くの精神神経科での治療がスタートします。

基本は薬物治療。

まずはSSRIのパキシル。眠気がひどすぎてNG。
続けてSSRIのデプロメール(ルボックス)。効いてるんだか効いてないんだか分からずNG。
その当時最も新しかったSSRIジェイゾロフト。ひどいアカシジアが出て断念。

どうもSSRIは合わないらしいと、三環系のアモキサン。相当量を増やしてみましたが、真冬なのに汗がだらだら出るだけで、体質に合わずストップ。
SNRIであるトレドミンも試したけれど、まったくその効果が感じられません。
じゃあ、前に失敗したジェイゾロフトをほんのちょっとにしてみる、というチャレンジをしてみたんですが、がっつりアカシジアが発現。まったく体質に合わないことを再確認しました。

ジェイゾロフトの副作用に嫌気がさし、医師に泣きついたところ「じゃあ、入院してじっくりやってみようか」との打診を受けました。正直に言って「精神神経科の隔離病棟に入院」というフレーズに抵抗はありましたが、もういい、治るんだったらなんでもやってやらあ、と腹をくくりました。

で、ベッドが空くまでに1ヶ月あるので、ずいぶん古い薬だけれど、「アナフラニール」を飲みながら待ってみましょうか、と主治医が提案してくれました。

皮肉なもので、この「アナフラニール」が私にとって運命の薬でした。私の脳の鍵穴にバシッとハマるのが、「アナフラニール」だったんです。入院待ちの一ヶ月でどんどん私は元気になりました。

個人のうつ病と、抗うつ薬は、鍵穴と鍵の関係に似ています。私にとって「アナフラニール」は特効薬でした。しかし他のタイプの鍵穴を持つうつ病患者にとっては、「ラムネ程度」どころか、副作用しかもたらさない毒である可能性が高いです。人によってはまだ「鍵」となる薬が見つかっていない、あるいは認可されていないケースも大いにあります。

さて、そんな難しい病気うつ病。

一般のみなさんは「うつ病は心の風邪」というキャッチフレーズを聞いたことがあると思います。

うつ病経験者から言わせてもらうと「ふざけるな」です。

おそらくこの「うつ病は心の風邪」というキャッチフレーズは、精神科、心療内科、メンタルクリニックに通院することへの抵抗をなくし、病院の敷居を下げるために作られたものだと思います。風邪みたいなもんなんだから、気軽に病院へ。だいじょうぶ、薬をのんで、しっかり精神科医の言うことをまもれば、ちゃんと治ります、ってことですね。

たしかにこの言葉で救われた人もいるでしょう。それは「功」。しかし「罪」も大きかったのです。

まず「風邪」などという、軽い、短期間で治る症候群になぞらえてしまったこと。うつ病の治療は、本当に大変なんです。1年や2年で治ればものすごい幸運。30年をかけても一向に改善しない人を私は何人も知っています。風邪なんて言葉で片付けて欲しくない。自殺という、最悪の結末をあっさり迎えることがある「死に至る病」なんです。

そして「心の」とつけてしまったこと。罹患者から言います。うつ病は「心の病気」じゃありません。「脳の病気」なんです。「心の病気」などというと、うつ病の経験の無い人の中には、「心の病気なんだから、考え方ひとつ、気分転換ひとつ、気合ひとつで治るはず」という、ミジンコ並みと言ったらミジンコが気分を害するほどの想像力のなさを発揮してくれる人が現れます。

そんな生易しいもんじゃないんです。考え方を変えろ? 気分転換? 気合? ふざけんな。

毎日のように自殺を考えるような、地獄を味わうのです。朝起きて、今日自殺をしようか、なんとか我慢するかで葛藤するのです。死が常に自分の枕元にあるんです。

頑張って会社に出てくれば何とかなる、根性が足りないんだ、なんていうヤツは、そいつの脳をかっさばいて、注射器でセロトニンとノルアドレナリンとドーパミンを取り去ってやりたいと思います。

クローズアップ現代で「認知行動療法で、うつ病を根本から治す」などというまったく分かっちゃいないナレーションが何度も流れていました。ものすごく腹が立ちました。認知行動療法は、悲観的に物事を考えてしまうクセを、少しずつ修正する、いわば思考法の訓練です。たしかに効果はあります。

ですが、私の考えではうつ病はあくまでも「脳内物質の異常が巻き起こす病気」です。物質が原因の病気に、考え方の訓練が「根本的な治療」になんかなるわけがない。悲観的な考え方が脳内物質のバランスを崩すことはあるでしょう。それは暴飲暴食という行為が糖尿病を招くのと同じです。が、暴飲暴食を改めることが糖尿病の「根本的治療」になりますか? なりません。症状を軽くし、回避するだけです。

うつ病は脳内物質のバランスが、ストレスを中心とするさまざまな要因によって崩れる、「化学的な病気」です。そして糖尿病になりやすい体質の人がいるように、うつ病になりやすい脳の人がいるのです。その人が大きなストレスにさらされたとき、うつ病を発症するのだ、と私は考えています。それは糖尿病の因子を持っている人が、暴飲暴食や運動不足の蓄積で発症するのと同じです。

「うつ病は心の風邪」なんかじゃない。

心の病気でもなければ、風邪のように簡単に治る病気でもない。

治療に長くかかり、完治が難しく、何度でも古傷が痛む点では「脳の複雑骨折」。
生まれ持った体質に、ストレス等の要因が重なって発症し、完治が難しい点では「脳の生活習慣病」。

あまりいいたとえが出来ませんでしたが、わたしは「うつ病は心の風邪」というキャッチフレーズに激しい違和感と怒りを覚えます。

<ゴンザ>

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posted by ゴンザ at 05:52 | 静岡 ☀ | Comment(4) | TrackBack(0) | 医療エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
パキシルで検索中です
病院から 保険適用の費用で パキシルとレバミピド 昨日から 飲みだした 私です。
早く 薬を減らして 健康で 明るく がんばりたいなぁ
病気でも 明るく がんばるよう努力します。
健康研究会(名前検討中
Posted by 政治家でない村石太さん at 2011年02月16日 20:31
まったくその通り!主様のおっしゃること、すごく分かります。私もうつ病で回復と再発を繰り返し、時々心が折れそうになります。自分の孤独を周りに理解されず、一日一日を生きるのが、精一杯です。でもこのページに出会えて、孤独な気持ちが少しやわらぎました。感謝です。
Posted by まんぼう at 2012年01月02日 02:24
まんぼうさん、読んでくださってありがとうございます。さぞ苦しいでしょうが、一歩一歩行きましょう。

東日本大震災被害を見て私は思いました。

誰もが一瞬後の死を知らぬままに生きているのだ。こうして今生きていることは奇跡なのだ。自分は在るだけでいい。もし少しでも楽しい気持ちになれたり、人とつながったと思えればそれは計り知れないほどのプラスなのだと。

役に立たない? 迷惑をかけている? そんなことはどうでもいい。在るだけで、生きているだけで十分です。私はうつ病とともに生きていきます。
Posted by ゴンザ at 2012年01月02日 23:56
突然お邪魔したのに、レスいただき、ありがとうございます。
力強いお言葉に、勇気をいただきました。

最近新しい薬に変える度に調子が悪くなり地獄を味わうので、薬を変えることがこわくて仕方ありませんでした。
また、「うつ病は必ず治る病気です」という言葉にも、何だか他人事に思えて、一体いつまで我慢すればいいんだよと、イライラしてしまう状態です。

でも今日生かされているなら、生きられない人の分も何とか一日生きていきたいと思います。主様のように、自分にも合う薬があるかもしれないですしね。
とても励みになりました。ありがとうございます。
Posted by まんぼう at 2012年01月04日 02:02
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