2012年09月02日

公衆無線LANサービスの2012年現況

はじめに

ここでいう無線LANとは、通信の際に従来の有線接続に換えて、主に電波を使って構成する構内情報通信網(Local Area Network)である。無線LANは企業や家庭などでケーブルのわずらわしさを無くし、また有線でつなぐことが難しい箇所に情報端末を設置できるという利点で普及した。この、情報端末とLANの間に物理的な接続を必要としないという長所から、不特定多数が利用できるアクセスポイントを利用する形のサービス「公衆無線LAN」が誕生した。

日本で公衆無線LANサービスが提供され始めたのは2001年頃。ノートPCやPDA向けのサービスで、外出先でも情報にアクセスが必要なビジネスマン向けのものであった。しかし、2009年ごろから携帯電話使用の目的が「通話」よりも「データ通信」に移り変わっていくにつれて、携帯電話キャリア各社がこぞってサービスを拡大した。その意図は、従来の携帯電話データ通信網、いわゆる3G回線網でやりとりされる通信を少しでも公衆無線LAN網に退避させ、3G通信網への負荷を減らすことであった。

そして2012年現在、無線による通信網は
従来の携帯電話通信網(3Gなど):広域で低速
データ通信無線網(Wimaxなど):中域で中速
新しい携帯電話通信網(LTE、4Gなど):拡大中で高速
公衆無線LAN網:スポット的に存在し、高速
こうした複数のサービスが重なり合って存在している。

用語の解説

IEEEとは?
アイトリプルイー。The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.の略称。IEEEと聞くと無線通信規格を思い浮かべる人も多いと思うが、IEEE自体はアメリカ合衆国に本部を持つ学会組織である。日本では「米国電気電子学会」と訳されることが多い。

IEEE802.11とは?
IEEEの後ろに数字がつくことで、それはIEEEが定めた「規格」を意味する。「IEEE802」は中小規模のネットワーク通信についての規格であり、さらに拡張子「.11」がつくことで「無線LANに関する規格」を示す。2012年現在一般的に使用されているのは以下の規格。
規格周波数帯最大伝送速度備考
IEEE 802.11b2.4GHz11Mbps 
IEEE 802.11a5GHz帯54Mbps電子レンジの干渉を受けやすい。日本では電波法抵触のおそれがあり使いにくい。
IEEE 802.11g2.4GHz54Mbps 
IEEE 802.11j4.9-5.0GHz54MbpsIEEE 802.11aの日本向け改良版。
jがついているのはJapanではなく偶然。
IEEE 802.11n2.4GHz/5GHz600MbpsMIMO (Multiple Input Multiple Output)という、いくつもの通信方式を並行的に使う規格。


Wi-Fiとは?
IEEE802.11に準拠して作られた無線機器に対し、アメリカの業界団体「Wi-Fiアライアンス」によって与えられるブランド名

無線公衆LANサービス分析
(1)移動体通信事業者提供型
2001年頃から「ホットスポット」と呼ばれる、無線LANがつながるレストランなどは存在した。しかし、それは外からでもインターネット回線に接続する必要がある一部のビジネスパーソンやヘビーユーザにとってのみ重要なサービスで、一般にはさほど普及していなかった。

現在の公衆無線LANサービスのけん引役となっているのは、移動体通信事業者、いわゆる「携帯電話キャリア」である。その背景には、スマートフォンの普及により、既存の3G回線のデータ通信量が増大し、システムを圧迫していることがある。このあふれ出すデータを公衆無線LANという、比較的高速かつ安定した回線に退避させることで、3G回線からのデータ通信量分散をはかるのが目的と思われる。

以下に移動体通信事業者の現在の無線LANサービスをまとめる。
事業者サービス名AP数無料となる条件左記に該当しない場合単独契約
NTTドコモdocomo Wi-Fi約8100ヶ所パケット定額サービス加入2013年3月末まで315円/月1575円/月
KDDIau Wi-Fi SPOT約7万ヶ所パケット定額サービス加入
あるいはauのiPhone使用
不可不可
ソフトバンクモバイルソフトバンク Wi-Fiスポット20万ヶ所完全定額パケットサービス加入
段階型パケットサービスは期限あり
490円/月不可
UQコミュニケーションズUQ Wi-Fi非公開UQ WiMAXの契約をしている不可不可

その特徴は、
・スマートフォン、高機能携帯を使い、パケット定額サービスに加入しているユーザへの無料サービスとしての位置づけ。
・単独のインターネット接続サービスとしては、基本的に提供していない。ドコモのみ行っているが割高な印象。
・移動体通信事業者にとって、公衆無線LANサービスの提供は「安価な小規模データ通信局の設置」に近いと思われる。

公衆無線LANイメージ

(2)有料プロバイダサービス型

通常のインターネット接続サービスと同様、会員から月額利用料を徴収することで成立しているタイプ。光回線やADSL等の通常の固定回線接続サービスの「オプション」的な位置づけであったり、主たる光回線とのセットで大幅に安くなるケースが多い。

以下に有料型の主な公衆無線LANサービスをまとめる。
事業者サービス名AP数割引条件左記に該当する場合単独契約
NTTコミュニケーションズOCNホットスポット4000以上OCNユーザ315円/月525円/月
NTT東日本/西日本フレッツ・スポット7万ヶ所フレッツユーザ210円/月945円/月
ケイ・オプティコムeoモバイルWi-Fiスポット約1万ヶ所eo光ネットユーザ315円/月1575円/月
ヤフー・ジャパンYahoo!無線LAN(BBモバイルポイント※ )約4200ヶ所Y!プレミアム会員210円/月525円/月
ライブドアLivedoor Wireless約2500ヶ所なしなし525円/月
※BBモバイルポイントは直接サービスを行っておらず、対応プロバイダを通じての利用となる。価格例はヤフー・ジャパンをプロバイダとした場合。

その特徴は、
・割引条件が適用されると、かなり安価に利用でき、ユーザには割安感がある。
・主契約との相乗効果で加入を促し、一顧客あたり売上単価を高くできるメリットがある。
・ここに挙げたものは基本的にアクセスポイントを独自に設けているものだが、他者との提携でアクセスポイントを増やす動きも活発。
たとえば2012年6月にOCNホットスポットはBBモバイルポイントとローミングを開始している。

(3) ローミングサービス型

 自社ではアクセスポイントを設置することなく、(1)(2)に挙げたような公衆無線LANサービスを束ねて提供することで成立する提携型のサービスである。

 以下にローミングサービス型の主な公衆無線LANサービスをまとめる。
事業者サービス名AP数提携先料金
ワイヤレスゲートワイヤレスゲート10000以上ホットスポット、BBモバイルポイント、Livedoor Wirelessなど380円〜780円/月
ワイヤアンドワイヤレスWi2 300不明Wi-Fiスクエア、BBモバイルポイント、UQ Wi-Fi380円/月
エコネクトエコネクト Wi-Fi約2万4千ヶ所BBモバイルポイント、Livedoor Wireless、UQ Wi-Fi380円/月
・ワイヤレスゲートには、ヨドバシカメラ店頭で申し込むヨドバシカメラオリジナルプラン、ワイヤアンドワイヤレスのWi2 300には、ビックカメラ店頭で申し込むビックカメラオリジナルプランがある。
・380円/月という業界スタンダードの料金相場が見て取れる。
・いくつかのサービスを束ねているため、アクセスポイント数やその種類が充実しており、割安感がある。

(4)エリア付加価値無料サービス型
 スマートフォンが普及し、ビジネスの重要なツールや、時間つぶしのための道具となるに従い、「スマートフォンが快適につながるエリア」には価値が生まれるようになった。たとえば同じようなファストフードの店であれば、公衆無線LANサービスにつながる店舗のほうが、つながらない店舗よりも、多くのユーザが足を運ぶようになる。

 そうした「エリアへの付加価値」を求めて、公衆無線LANアクセスポイントを設置する場合、その主たる目的は「集客」であるため、多くは無料、あるいは会員制無料でサービス提供を行っている。そうしたタイプと思われるサービスを列挙する。
事業者サービス名AP数主な場所無料利用条件
セブン&アイ・ホールディングスセブンスポット1,300店舗〜セブンイレブン、イトーヨーカドー、そごう、西武百貨店、デニーズなど1300店舗で開始。NTT東日本やNTT西日本と共同で展開。2013年2月末までに全国14,000店舗へ展開予定。要会員登録。1日最大3回(各60分以内)利用可。
ローソンLAWSON Wi-Fi6000店舗〜2012年3月からローソン、ナチュラルローソン6,000店舗でサービス開始。アクセスポイントはKDDI(au)が構築。KDDI au wi-fi SPOT、docomo wi-fi(約8000店)、ソフトバンクWi-Fiスポット(約7000店)も順次導入中。要Ponta会員登録。アプリを起動して接続。
タケショウFree Mobile不明自動販売機に無線APを内蔵させている。フリー接続と、セキュリティのかかった要事前登録の接続があるが、どちらも無料。
FREESPOT協議会FREE SPOT約9500箇所カフェ、飲食店、公共施設、ホテルなど要事前登録。基本的に無料。ただし、施設利用者のみの場合もある。


 コンビニの本格参入が目立つ。APや施設は「主な場所」に記されたように、各接続プロバイダとの提携によるもの。無料のAPによって集客力を上げ、ひいては売上を上げることで、提携費用、設備費用をまかない、無料で提供するビジネスモデルと推測される。なお、ファミリーマートはソフトバンクWi-Fi、サークルKサンクスはau Wi-Fi SPOT、Wi2 300などのAPを設置しているが、2012年8月現在は有料である。img2.PNG

アクセスポイントを設置することは、店舗にとってユーザを呼び込む「集客効果」の狙いがある。 設置によって増えた顧客数、ひいては期待される売上増からインターネット接続費用を回収する目的。

これは、民放がテレビ広告を挟むことで、無料で映像コンテンツを提供するのとほぼ同じであり、「三者間市場」と呼ばれる収益構造である。公衆無線LAN無料サービス型は、コストが少ないため、三者にとってデメリットが少なく、メリットの多い理想的な三者間市場と言える。

(5)互助型
 個々のユーザーが自らのインターネット接続環境を公衆無線LANサービスのアクセスポイントとして提供する代わり、おなじように提供を行う他のユーザーのアクセスポイントを利用できるというモデル。「草の根」的に発展してきたが、セキュリティ面に難を持つ。

事業者サービス名AP数主な場所無料利用条件
フォン・ジャパンFON海外含め200万以上スペインで2005年に始まった国際的サービス。海外でも利用可。FONルーターを設置し、会員登録をする。

(6)参考 アクセスポイントセールス
 (1)〜(5)まではユーザからの視点で公衆無線LANサービスを見てきたが、アクセスポイント設置をセールスする側の情報を、参考として記載する。
事業者サービス名初期費用月額費用備考
ワイヤアンドワイヤレス
(代理店メディアワールド)
Wi-Fiスクエア2000円1260円インターネット接続環境は別途店舗側で準備。
モビネクトモビネクト
※大規模店舗
0円無線ルータ電気代インターネット接続費用もモビネクト持ち。
1年ごとにアクセス数を分析し、少ない場合は小規模店舗のプランへと変更される。
モビネクト
※小規模店舗
要見積もり東日本 5,460円
西日本 5,670円
+無線ルータ電気代
インターネット接続費用を店舗側で負担。
非常に安価であり、とくに集客力がもとからある大規模店舗に対しては「アクセスポイントを設置させてください」という姿勢でセールスしているように見受けられる。

いまや店舗にブロードバンド回線が引かれていないことのほうがまれであろう。光回線が引いてあれば、無線LANルータを設置するだけで公衆LANスポットを設置できるため、今後ほとんどの店舗や公共エリアに公衆無線LANが張り巡らされる日も近い。

課題となるのはセキュリティである。無線信号の傍受、暗号の解除、不特定多数が使えるゆえのアクセスポイントの悪用など、考えられるリスクは多く、そして高い。が、それ以上の需要が後押しして、高いリスクを甘受しながら公衆無線LANスポットは広まりを見せる。利用者とアクセスポイント設置者、どちらもがセキュリティ意識を高めることが必要と思われる。

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posted by ゴンザ at 13:59 | 静岡 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 小論文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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