2004年11月09日

【文芸】ゴザンステーマ『毛のはなし』

ゴンザのゴザンス投稿作品を振り返るシリーズの第2回目です。ゴンザとゴザンスの関係について知らない方はこちらをご覧くださいませ。

さて、今回はゴンザの記念すべき初投稿作品「毛のはなし」。募集されたテーマはたしか「12歳の夏」でした。

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【テーマ】毛のはなし (2003-08-08 11:50:58)
text: ゴンザ

僕は比較的、幼い12歳だった。
しかし、その夏の日、僕はオトナへなることを意識する。

月曜日は、朝礼の日だ。

暑いさなか、校庭に1年生から6年生までずらりとならび、ラジオ体操をして、校長先生の話を聞いて、校庭を行進してから校舎に入る。
上ばきに履きかえて、僕は1階の階段下にあるトイレに寄った。ここでおしっこを済ますのがいつもの習慣だ。

用を足して、しまおうとしたとき、指先に何かが触れた。
なんだろう?と見下ろして、僕は固まった。

……毛?

たしかに見える。毛だ。

右側に3本。左にはない。
短いのが2本で、長いのが1本。

しばしの間、状況がよく分からなかった。
もし傍から見ている人がいたら、さぞ挙動不審に見えただろう。
とっくに用は済んでいるはずなのに、便器の前で立ち尽くす少年。
股間を覗きこんで、動きを止める少年。
無言でしげしげと自分の相棒を観察する少年。

……これは……ひょっとしてここから生えている?

必要以上の時間をかけて、その仮説に達した僕を、責めないで欲しい。まだ幼かったのだ。

気を取り直した僕は、次に仮説の証明に取りかかった。
髪の毛が、ひょんな具合でパンツの中に紛れ込んでいる可能性もある。これは糸くずかなにかで、毛ですらないかもしれない。自前の毛であるということを、結論づけるにはまだ早い。

実に科学的だ。さすが学研の「かがく」の愛読者である。

長いのを引っ張ってみる。
にゅっと根元が引っ張られて、テントのような形になった。

痛い。いや、思ったよりは痛くない。
意外とこのあたりの皮は、感覚が鈍いのかもしれない。
……そんなことはどうでもいい。

このちぢれた物体が、自分自身から生えているという事実は、
科学的に動かしがたかった。

なんともいえない気分になった。
わけもわからず、どきどきした。
いやなような、恥ずかしいような、それでいて少しうれしいような。

今考えてみると、自分の体がオトナになっていく、
ということに対しての、うれしさと反感だったのかもしれない。

のどのあたりがきゅっとなるような、
変な感じを味わいながら、教室に戻り席に着いた。
なんだか、ふわふわした頼りない感覚があった。

ぐるりと見渡して、思った。

僕は身体も大きくないし、大人っぽいわけでもない。
だから、こうして周りにいるクラスメートの大半は、
もうすでに、ああいう経験をしているのかもしれない。
そしてみな、なにも言わず、僕と同じように独りで驚いたのかもしれない。

急に周りが、違うように見えた。

その時はよく分からなかったが、
おそらく「自分」と「他の人」がいて、
「自分」だけでなく、「他の人」もいろいろな経験をし、
いろいろなことを感じ、いろいろなことを考えているんだ、
という至極当たり前のことを、すとんと実感したからだろう。

クラスメートの顔が、遠くに、近くに揺らぎ、
それでいて妙に鮮明に見える気がした。

……それにしても……
僕は思った。

長いほうの毛は、たっぷり5センチはあった。
こんなに立派に成長するまで気づかなかったのはどうしてなのか……?
僕はおしっこをする時も、お風呂で洗う時も、
よく見ないで作業をしていただろうか……?

先生が現れるまでのざわついた教室で、
少年はトイレでの自分の手順を、熱心に思い浮かべてみるのだった。

【終わり】
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<自分で解説>
初回からいきなりシモ系の話を投稿した自分の勇気に拍手です。いったいゴザンスにおいて、ゴンザはどんなキャラを確立しようと目論んでいたのでしょうか。今となっては藪の中です。

この話、ほぼノンフィクション。小学校6年生の時に体験したことを、当時の記憶をたどって書き上げたものです。妙に鮮烈に覚えている子供時代のエピソードって、みなさんいくつかあると思います。ゴンザにとってこれはその1つです。確認した場所、毛の本数と位置構成、とった行動など、ほぼ事実と一致している自信があります。だからどーした、とツッコまれる前に自分でツッコんどきましょう。

教室に戻ってから感じたことも、鮮明に覚えています。漠然としか認識していなかった「自分」と「他人」というものを、すとんと実感できた、腑に落ちた、という瞬間だったように思います。実際は今でも「自分と他人」について漠然としてるんですが、少なくともその時はぱあっと目の前が開けたような気がしました。私にとって、人生の中で数少ない哲学的な瞬間は、陰毛とともに訪れたわけです。

前半はしょうもない話から始めて、後半に少年時代の感覚をわりとうまく表現できたかな?と思っており、初投稿ではありますが、けっこう気に入ってる作品です。

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posted by ゴンザ at 11:47 | 静岡 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 文芸 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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