2012年02月13日

NHK特集「ここまで来たうつ病治療!」

2012年2月12日(日)21:00〜放送のNHKスペシャル「ここまで来た! うつ病治療」を見ました。結論から先に言ってしまうと、以前「クローズアップ現代」で扱われた「認知行動療法」についての放送よりは、かなり良かったです。何より脳科学の観点からうつ病を分析した姿勢を私は評価します。

人間の精神性を重んじる人からは極めて評判の悪い「脳科学」。人間の魂のありようが脳内の電気的信号によって説明が出来るなんて、魂を冒涜する考え方。そもそも電気信号によって説明する、「あなたの」考えも電気信号に過ぎないと、あなたは受け入れられるのか、と哲学者や宗教者は言います。一理ありますし、私の好きなミヒャエル・エンデ氏もそうした立場をとる人です。

が、私の考えでは、それは精神障害を患ったことのない人の、非情な意見です。糖尿病と聞けばすぐに「暴飲暴食してたんだろ、自分の責任だ」と簡単に決め付けるのと変わらない、病気の人に対して冷たい見方です。

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posted by ゴンザ at 08:50 | 静岡 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 医療エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年02月08日

「うつ病は心の風邪」じゃない

昨日のNHK『クローズアップ現代』で、うつ病の認知行動療法にスポットが当てられていましたね。

現在の私だけを知っている人は、たぶん信じてくれないでしょうが、私は三十余年もの間、うつ病に苦しんだ人間です。

それこそ幼稚園児の頃から、ときおり理由もなくふさぎこみ、両親を心配させました。幸か不幸か、学校の成績だけはよかったので、問題を起こしつつも「テストの成績はいいから、まあいいだろう」と中学、高校、浪人、大学と進みました。私にとって学校の勉強は、頭にかかるモヤのようないつものやる気の無さがちょっと晴れたときに、やっつけ仕事でなんとかするものでしかありませんでした。

が、だましだましのそのやり方が、大学では通用しませんでした。出されるクイズに答えればよかった世界から、放り出された「自由」な世界に、私は途方にくれ、今でいう「引きこもり」になりました。ほぼ丸2年です。

心を痛めた両親に北里大学病院の精神科に連れて行かれましたが、まだその当時うつ病の研究は今ほど進んでおらず、たぶんアモキサンと思われる薬を言われるまま飲んでいました。しかし、まったく効かず、そのうち病院からも足が遠のきました。

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posted by ゴンザ at 05:52 | 静岡 ☀ | Comment(5) | TrackBack(0) | 医療エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年04月25日

【医療エッセイ】1-6『4つの管』

※これはゴンザが2002年に体験した医療の現場についての連載レポートです。できれば過去の記事からご覧下さい。

◆記事目次◆
1-1)『輪切りの私』
1-2)『白衣の天使は実在するか?』
1-3)『センセイになった日』
1-4)『こうじょうせん途中下車の旅』
1-5)『オープン・ザ・医療』
1-6)『4つの管』(当記事)

私が甲状腺がんの手術のために入院したのは、2002年10月23日のことだった。奇しくもこの日は、私の誕生日である。

入院に際しては、たいてい看護婦さんによる問診があるが、その時まず最初に名前と生年月日を聞かれる。
「昭和**年、10月23日です……へへっ、今日なんですよ」
やや自虐的な笑いとともに答えると、看護婦さんは目を見開いて言った。
「まあ、そうなんですか。それはまた……一生忘れない誕生日になりますねえ」

……たしかにね。

最近の手術入院というのは、とてもハイペースである。入院した翌日には手術を行い、早ければ退院は1週間以内だ。首のところにある甲状腺を全部切り取って、リンパ節もざっくりいって、頚動脈の1本をブッチぎるわりには、ずいぶんスピーディだ。なんとなく、自分が流れ作業の電化製品にでもなったような気がする。

さて、手術前後というのは、色々と不自由なことが多い。

理由はいくつかあるが、その最たるものを一文字で言えば「」である。
管が体の各所に入れられているので、身動きが取れないのだ。

まず1つめ。おなじみの点滴である。
水分や栄養をとるためであったり、傷の化膿を防ぐ抗生剤の投与であったり、麻酔の準備としてであったりと目的はいろいろあるのだが、手術前後は、ずっと左腕に点滴の管が刺さったままだった。

次に鼻の管だ。
手術の直前に鼻の穴から胃に達する、細い管を入れられる。
手術中に嘔吐を起こさないための対策らしい。

手術室に入ってすぐ、鼻から管を突っ込まれ、「はい、吸い込んでくださーい」と言われる。
おえっ、となりそうなのを我慢してハナをすするように吸いこむ。
2度ほど失敗し、「はいがんばってー」と励まされてやっと成功した。
「はい、上手上手、いいとこ入ってますよー」
と看護婦さんに誉められた。

やった。俺やったよ母さん。

その後、無事に私は甲状腺準全摘手術を終えたわけだが、この管は、麻酔が切れてから3時間後までとってもらえなかった。
正直、この管が一番うっとうしい。

3つめは看護婦さんの言うところの「お小水の管」である。

つまりは、その、なんだ、アレである。
漢の排水管」を延長する形で管がつなげられ、ベッドの下のポリタンクにつなげられるのだ。
これにより、トイレに行かずに用が足せるわけだが、
「トイレくらい独りで行くし!行きたいし!行かせて!」
という気分になるのをとめることはできない。

全身麻酔での手術経験のない諸兄に、念のため言っておくが、この管は「漢の排水管」の外側を覆うように連結されるのではない。
内側につっこまれるのである。

麻酔が効いて意識のないうちに入れられる、というのは「武士の情け」なのだろうか。
ちなみに手術後丸1日外してもらえなかった。

この管が、どうやってしっかり連結されるのか?というあたりが気になる人もいるだろう。

じっくり観察してみたところ、どうやら管の先に、空気を入れるとぷくっと膨らむ風船状の部分があるようだ。入れるときには、このミニ風船には空気が入っていないので細い。それをぐいと突っ込む。しっかり突っ込んだら、そこでおもむろに空気を入れる。すると、管の中でミニ風船がふくらみ、ビシッと固定されるのである。(図1)

お小水の管の取り付け方
図1 お小水の管の取り付け方

この管、外される時は、もちろん意識がある。しかも外すのは看護婦さんだ。私の場合、けっこう美人な若い看護婦さんだった。なかなかに厳しい事態だ、とみなさん思われるだろう。

しかし、あまりにこの管がわずらわしいために、恥ずかしいというより、
「おう、姉ちゃん、とっととやっつくんな!」
という気持の方が強かった。ゆえに、残念ながら「どきどき初体験・やさしくしてね」という感じにはならなかった。

なお、この管は「外す時、痛いというより、すごく気持悪い」ということを、諸兄は覚えておくとよいだろう。

最後の4つめの管は、ドレーンというものである。

┏【医療な言葉:ドレーン】┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳
┣ drain
┣ 
┣ 排液管。手術を行った部位から出る血液、リンパ液や膿、
┣ 部位によっては淡などを排出するために入れられる管。
┣ 手術した部位に差し込まれるように入れられ、
┣ 排液の量が一定以下になるまでつけておく。
┣ 
┗┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻

私の場合は、鎖骨の上あたりにこのドレーンが入っていた。
細い透明のチューブである。
その先には10センチ四方くらいのレトルトパックのようなプラスチックの透明ケースがついており、ここに排液がたまっていくように出来ている。

術後2〜3日、患者はこのチューブにつながったパックを、仲良しペットのように、どこに行くにも連れ歩くことになる。いちいち持って歩くのは面倒であるので、このパックを入れておくポシェットのような袋が支給される。
病院側のうれしい配慮だ。

手術から2日目。

めでたく「お小水の管」がとれた私は、レントゲン検査が入っていることを告げられ、エレベーターで地下の検査フロアーに下りていった。

そして立ちすくんだ。

忘れていた。
ここは外来の患者さんも来るフロアだった。

私の入院した病院は、東京・表参道の駅前にある。
隣はベネトン。向かいにはモリ・ハナエビル。通りにはクリスチャン・ディオールにルイ・ヴィトン。今はあの「表参道ヒルズ」が出来ている。
周りを見渡せば、南青山、麻布、広尾、六本木。
日本一おしゃれな地域であるといっても過言ではない。

当然、外来でやってくる患者さんもおしゃれをしてくる人が多い。
患者の80%が女性であるから、なおさらだ。

私の前には秋らしいシックなブラウン系の装いに身を包み、モスグリーンのショールをゆったりと肩にかけた上品な若奥様風のご婦人が座っていた。

かたや、私である。

寝巻き代わりの作務衣をてれてれに着ている。
素足にスリッパである。
寝ぐせに無精ひげである。
動かせない首が右に傾いている
そして、排液のパックが入った真っ青なポシェットが、肩からたすきがけに下がっている。

たぶん若奥様は思っただろう。

なぜこの方、おにぎりを持っていないんでしょう?
傘のささったリュックも足りないんじゃないかしら?

「入院患者である」というのとは違った意味での気の毒さを、私は全身で演出していた。

手術直前にもかかなかったようないやな脂汗を背中にかきながら、検査の順番を待ったあの時間。

思えばあれが、入院中最大の試練だったかもしれない。

<つづく>

◆記事目次◆
1-1)『輪切りの私』
1-2)『白衣の天使は実在するか?』
1-3)『センセイになった日』
1-4)『こうじょうせん途中下車の旅』
1-5)『オープン・ザ・医療』
1-6)『4つの管』(当記事)


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posted by ゴンザ at 16:20 | 静岡 ☀ | Comment(6) | TrackBack(0) | 医療エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年03月22日

【医療エッセイ】石との闘いR(第4話/全4話) 成果篇

この記事はシリーズ連載です。できれば最初の記事からどうぞ。

前回シリーズ『石との闘い


■『石との闘いR』目次
 石との闘いR 第1話 発症篇
 石との闘いR 第2話 衝撃篇(前)
 石との闘いR 第3話 衝撃篇(後)
 石との闘いR 第4話 成果篇 当記事


破砕室から戻った私は、もう一度抗生物質の点滴を受けた。
この点滴が終われば、とりあえず今回の破砕手術は終了である。
だが、その前に看護婦さんから言われていたことがあった。
「必ずお小水を取ってくださいね。検査しますから。」

衝撃波によるダメージはどれくらいか。
どの程度石を砕くことが出来たか。
炎症を起こしてはいないか。
それが一番分かるのが、「手術後のお小水」なわけだ。
点滴が終わった私は紙コップを片手にトイレへ行った。

うわっ! 赤っ!

さすがに衝撃波を食らって、ダメージがないわけがなく、白いコップに満たされていく液体は、深みのあるワインレッド。
うーむ。赤い。つくづく赤い。

点滴によって水分をかなり取っているので、尿の量は充分だ。
……ていうか、多すぎる。
まずいまずいまずい。
もうすぐ紙コップいっぱいだ。
大きめアメリカンサイズの紙コップだというのに。
入れるのやめようか。
でも量も検査の対象かもしれないし。
コップをもう一個持ってくるんだった。
危機管理がなっていなかった。
うかつだった。
もうすぐレッドゾーンだ。

そんな葛藤の中、なんとか赤ワインはコップぎりぎりにおさまった。
お母さんのお手伝いをする子供のような慎重さで、そのコップを診察室まで運ぶと、看護婦さんが言った。

「あらあら、まあまあ、こんなにたくさん!」

土産をもらった親戚のおばさんか、あんたは。
でかい声でそんなこと言わんでくれ。

思ったより出血が少ないようだ、なかなかきれいな尿だ、などという看護婦さんの私の尿に対する論評を赤面して聞きながら、破砕手術初体験は終了した。

    ◇

手術してから1週間後。
成果を確かめるために、また私は病院に来ていた。
はっきりいって、成果はあまり感じられなかった。

まだ相変わらず腰に鈍い痛みがある。
そして砕けた石は出てきていなかった。
なぜそんなことが断言できるのかというと、確かめていたからだ。

尿を。

家でトイレに行く度に、古い茶漉しで尿をこしとってみていた。
しかし、ない。
網の上には石どころか砂すら残らない。
ない。ない。ない。
あるはずなのに。どうしてだ。
もはや気分は砂金探しである。

砂金はほとんど見つからず、故に今回の結果も期待していなかった。

レントゲンを見た医者は言った。
「すこし砕けたみたいですね。」
前回と今回のレントゲンを見比べてみると、石は確かにその一部が欠けていた。
おお。少しは効果があったのか。
じゃあ、その一部は気づかないうちに外に出たのか?

「……たぶんこの欠けた部分は……腎臓に戻ってますね。」
は?

「ここんとこが欠けて、で、ほらこの腎臓のところに、
 小さな石が写ってますよね。」
あ。ほんとだ。

「欠けた部分が腎臓に逆流しちゃったようですね。ははっ。」
ははは……ってオイ。ダメじゃん。

「こりゃ、もう一回ですね。いつがいいですか?」
……やっぱり?


結局、私の石が砕けたのは2回目のトライ後だった。
2回目は1回目より痛くなかった。慣れたのかもしれない。
そのうち気持ちよくなるのかもしれない。

そして砂状になったシュウ酸カルシウムは、茶漉しの上をしばらくにぎわし、私の砂金採り魂を満足させてくれたのであった。

    ◇

ゴンザは『超絶!結石破砕衝撃波』を会得した。
ゴンザはレベルが上がった。
ゴンザの闘いの旅は、これからも続いていく。

<第2部・完>

■『石との闘いR』目次
 石との闘いR 第1話 発症篇
 石との闘いR 第2話 衝撃篇(前)
 石との闘いR 第3話 衝撃篇(後)
 石との闘いR 第4話 成果篇 当記事


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2006年03月19日

【医療エッセイ】石との闘いR(第3話/全4話) 衝撃篇(後)

この記事はシリーズ連載です。できれば最初の記事からどうぞ。

前回シリーズ『石との闘い

■『石との闘いR』目次
 石との闘いR 第1話 発症篇
 石との闘いR 第2話 衝撃篇(前)
 石との闘いR 第3話 衝撃篇(後)当記事
 石との闘いR 第4話 成果篇


点滴スタンドをお供に「破砕室」につくと、奥から医者がひょいと顔をのぞかせて会釈した。

しれっとした顔のしれっとした医者はしれっとした口調で言った。

「立派な石をお持ちで。」

テンションの高いときの私なら、この小粋な泌尿器科ジョークに、
「ほほほほほ。大したことござあませんのよほんの1.5カラット。」
と応じることが出来たかもしれない。
だが今はそんな余裕はない。

「はあ、どうも。」
もそもそ答えると、しれっとした医者は、ジョークがスベったことを気にした風もなく、こくんと頷いた。
このジョークでは、スベり慣れているのかもしれない。

さっそく手術台の上に乗せられる。
真中片側がぽっかり欠けた高いベッドという感じの手術台だ。

衝撃波結石破砕装置

仰向けに寝ると、その欠けた部分に腰が来る。
おしりと背中で身体を支えて、腰は宙に浮いている形になる。
そして、横から衝撃波を発する機械が入り込む。
腰の下からぐにゃりとした透明の半球が押し付けられ、上からはなにやら円筒状のものが見下ろす。

こんなもので、体内のミリ単位の石に焦点をあわせて、
それを砕くほどの衝撃波を当てることができるのかー。
すごいなー。
…………。

……本当にできんのか?

にわかに科学技術に対して懐疑的になった私に、医者が言った。
「はい、行きますよー。ちょっとバチッと来ますよー。」

バチッ!

たしかに。

衝撃波を浴びたことのない人のために、レポートしよう。
痛さは「重い電気ショック」といったところだ。
静電気でバチッとくる感覚に、少し深みを加えてビターな味わい。

痛いか痛くないか聞かれたら、私は答える。
痛い、と。
痛いに決まってんだろ、と。

だいたい1秒に2回くらいのペースで、バンッ!バンッ!
という音とともに衝撃波が当てられる。
一撃ごとの痛さは、それほどでもない。
ただ、連打なので、痛みが徐々にたまっていく気がする。

5分ほどボディブローをくらい続けると、急に痛みが軽くなってきた。

なんにでも慣れというのはあるものだ。
そのうちコレも気持ちよくなってくるのかもしれない。
それはとてもイヤなことだけれど。

などと一息ついていると、医者が急に装置を止めた。
「急に軽くなりませんでした?」
……慣れではなかったらしい。

医者は私を一旦ベッドからどかせて、装置をいじり始めた。
どうやら、装置の中の消耗部品が磨耗していたようだ。
医者は得意げに言った。
「機械が正月ボケしてたみたいでね。いま新品のに交換しましたから。」
 
……えーと。ここ喜ばなきゃいけないとこ?

目の前で数撃の試運転をしてくれた。
腰に当てるバレーボール大の透明な半球の中に、バチッと派手な電撃が走った。
まさしく稲妻。

こんなもん当てられとったんか俺は。

バチッ!バチッ!

リフレッシュした稲妻製造機は、とてもイキが良くなっていた。
さっきより、痛い。新品おそるべし。
衝撃波を当てながら、当てる方向や位置が微妙にずらされるのだが、この角度によってずんと痛くなる。
腰骨に響くような角度に来たりすると、かなり痛い。

気を紛らわせないと、やっていられない。
他のことを考えよう。そうだ。こういう時は九九だ。

(いんいちがいち。いんにがに。いんさんがさん。いんしが……)

基本に立ち返り、一の段から。

(さぶろくじゅうはち、さんしちにじゅういち、さんぱにじゅう……はち?)

小学校2年生2学期レベルの間違いをしつつ、九九を何度も繰り返した。
延々30分くらいの間、九九をループ。なにがなんだかわからなくなってくる。
ようやく「はい、お疲れ様でしたー。」機械が止まった。

「痛かったですか?」と聞いてもしょうがないことを聞く医者に、へへっと半笑いで答えながら、私は手術台を降りた。

ありがとう。先生のおかげで苦手な七の段もバッチリさ。

<つづく>

■『石との闘いR』目次
 石との闘いR 第1話 発症篇
 石との闘いR 第2話 衝撃篇(前)
 石との闘いR 第3話 衝撃篇(後) 当記事
 石との闘いR 第4話 成果篇


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2006年03月16日

【医療エッセイ】石との闘いR(第2話/全4話) 衝撃篇(前)

この記事はシリーズ連載です。できれば最初の記事からどうぞ。

前回シリーズ『石との闘い

■『石との闘いR』目次
 石との闘いR 第1話 発症篇
 石との闘いR 第2話 衝撃篇(前) 当記事
 石との闘いR 第3話 衝撃篇(後)
 石との闘いR 第4話 成果篇

年明けすぐ、私は衝撃波による結石破砕術を受けることになった。
かなりご機嫌な新年の幕開けである。

衝撃波破砕は手術の一種だが、切らないで済むので身体へのダメージが少なく、日帰り入院のケースが多い。
私も日帰りでの手術となった。

午後1時に衝撃のスタートだが、11時に受付に行く。
手術前の下準備があるのだ。
診察室奥の部屋に通されると、そこには無理やりな感じで、3床のベッドが並べられていた。
それぞれがカーテンで仕切られていて、学校の保健室のようだ。

隣にはすでに誰かが入っているらしく、カーテンが引かれている。
看護婦さんと患者らしきおじさんの声が聞こえてきた。
「○○さーん、12時半から衝撃波だよねー。」
「おー。もうすぐ点滴1本目終わるよー。」
「はーい。さすがベテランさんだねえ。」
「いやいやー。あははー。」

どうやら、隣にいるのは結石の玄人らしい。
私もいずれはあんな風になれるのだろうか。

なりたかない。

私も点滴を受けることとなり、まずは手術着に着替える。
基本的にはパジャマのようなものだが、点滴の管をさばきやすいよう、上着はハッピのようになっている。
「ピンクのしかないんだけど、いい?」
看護婦さんが申し訳なさそうに言う。

……そこは大した問題じゃないです。

気弱に笑った私は、さっさとピンクに着替えて点滴を受けた。
点滴の中身は生理食塩水、ブドウ糖、抗生物質といったところだ。

ところで、手術といえば麻酔がつきものだが、衝撃波破砕術には麻酔は用いない。
麻酔なし。麻酔なしで衝撃波。衝撃波でどーん。

ただし「痛み止めはします」と聞かされていた。
痛み止めの注射は大抵、普通の静脈注射より痛い筋肉注射だ。
痛み止めの注射が痛いというのは、ガラの悪い警察官みたいに不条理だ、などと考えていると、看護婦さんが近づいてきた。
「そろそろ痛み止めして、破砕室に行きましょうね。」

……あの。
その手に持ってらっしゃるのはなんでしょうか?
白くて弾丸のようなその形。
そしてあなたはなぜビニール手袋をしてらっしゃるの?

痛み止めは坐薬だった。注射ではなかった。

しまった。その可能性を失念していた。
いきなりこんなところで、おしりに危機が訪れるとは予想だにしていなかった。
ひっつめ髪の看護婦さんは入れる気満々で迫ってくる。

右手に光る白い銃弾
やばいやばいやばいやばい。
ゴンザ、貞操の危機

人間というものは、危機に陥ると驚くべき集中力を発揮する。
看護婦さんの数歩の間に、私は頭脳をフル回転させていた。
何かいい手はないかないかないかないかないか…………。

「あ、あの、ちょっとトイレ行ってきていいですか?」
「ああ、いいですよ。」
「すいません。」
「あ、じゃあこれ自分で入れてこられる?」
「もちろんです。」
「出たら、そのまま破砕室に行きましょう。」

よっしゃあああああ!

トイレに行く→脱ぐ→用を足す→もどる→脱ぐ→坐薬→二度手間。
トイレに行く→脱ぐ→用を足す→坐薬→効率的。
看護婦心理誘導作戦は、見事に成功した。
操は守った。

私は意気揚揚と坐薬を入れると、ピンクのパジャマ姿で点滴スタンドをカラカラ引きながら、破砕室へと向かった。

<つづく>

■『石との闘いR』目次
 石との闘いR 第1話 発症篇
 石との闘いR 第2話 衝撃篇(前) 当記事
 石との闘いR 第3話 衝撃篇(後)
 石との闘いR 第4話 成果篇

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2005年12月15日

【医療エッセイ】1-5『オープン・ザ・医療』

※これはゴンザが2002年に体験した医療の現場についての連載レポートです。できれば過去の記事からご覧下さい。


◆記事目次◆
1-1)『輪切りの私』
1-2)『白衣の天使は実在するか?』
1-3)『センセイになった日』
1-4)『こうじょうせん途中下車の旅』
1-5)『オープン・ザ・医療』(当記事)
1-6)『4つの管』

甲状腺癌の治療方法の主流は、外科的手術である。癌になっている部分を切除してしまうという治療が症例のほとんどを占める。

私もこの切除手術を受けることとなった。甲状腺全摘手術である。

東京の病院への転院後すぐ、病状と手術について主治医から詳しい説明を受けることになった。いわゆるインフォームド・コンセントというやつである。

┏【医療な言葉:インフォームド・コンセント】┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳
┣ Informed Consent
┣ 
┣ 「説明を受けた上での合意」。
┣ 医療の世界では永らく「患者は医者の指示に黙って従うもの」
┣ という考え方が支配的であった。
┣ しかし近年、医師の立てる治療計画について、
┣ 医師は十分な説明を行い、患者はそれを納得した上で
┣ 治療を受けるべきである、という考え方が起こった。
┣ これがインフォームド・コンセントである。
┣ 「開かれた医療」の根幹理念と言える。
┣ 
┗┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻

まだ30代と思しき若い主治医は、背の高い、自信にあふれた男だった。
ひとしきり甲状腺癌というものについて、そして私の病状について説明してくれた。

「比較的進行していますが、大丈夫です。
 甲状腺癌は怖いものじゃないですから。
 20年後の生存率も90%以上です。」

自分の生存率がパーセンテージで説明されるのは、なかなか複雑な気分である。

手術自体はさほど難しいものではないこと。甲状腺全体と、病巣が広がっている右首筋のリンパ節の一部を切除すること。また、右首筋の動脈の一本を切除することなどを医師は説明した。

首の動脈!? そんなん切って大丈夫なんかい!?と驚愕したが、医師によれば、一本を切除すると、他の動脈が太く成長して、失われた部分をきちんと補ってくれるのだそうだ。

「人間の身体って、良く出来てるんですよ。」
そう言われてしまうと、こっちとしてはもう「はあ。そうなんですか。」と返す以外ない。所詮は素人なので、最後の部分は医師を信用するしかない。ある意味においては、病院選び・医者選びの段階が、「インフォームド・コンセント」の最重要部分とも言えるだろう。

「では手術の合併症について説明しますね。」

┏【医療な言葉:合併症】┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳
┣ がっぺいしょう
┣ 
┣ 手術をすることで生じるマイナス面のこと。
┣ 事故的なものも含めての手術の危険性と、
┣ 結果として起こりうるデメリット、と考えればよいらしい。
┣ ちなみに、手術でなく「糖尿病の合併症」というような
┣ 文脈で使われる場合は「ある疾患に付随して起きる他の病状」
┣ という意味になるようだ。
┣ 
┗┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻

「えーと、まず手術後の出血です。
 手術後にですね、切った部分が中で出血を起こすと、首から顔のあたりがこうぱんぱんにはれてですね、危険です。
 これ死にます。」
 
 おい!
 
「まあ、これは起こる可能性は極めて低いですから大丈夫です。」

 先に言えよ!
 
「それから、声を出す神経を傷つける可能性があります。
 この神経は右と左にあるんですが、両方とも動かなくなると、呼吸が出来なくなってですね、
 これも死にます。」

 こらー!!
 
「まあ、今回はそこまでメス入れないで済むと思います。」

 だから先に言えって!!

    ◇
 
主治医はとても率直な人だった。説明は簡潔で、わかりやすかった。
欲を言えば、話の展開と言葉の選び方にもうちょっと工夫が必要なような気がした。

ビバ・開かれた医療。

【つづく】

◆記事目次◆
1-1)『輪切りの私』
1-2)『白衣の天使は実在するか?』
1-3)『センセイになった日』
1-4)『こうじょうせん途中下車の旅』
1-5)『オープン・ザ・医療』(当記事)
1-6)『4つの管』

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2005年12月06日

【医療エッセイ】1-4『こうじょうせん途中下車の旅』

※これはゴンザが2002年に体験した医療の現場についての連載レポートです。できれば過去の記事からご覧下さい。


◆記事目次◆
1-1)『輪切りの私』
1-2)『白衣の天使は実在するか?』
1-3)『センセイになった日』
1-4)『こうじょうせん途中下車の旅』(当記事)
1-5)『オープン・ザ・医療』
1-6)『4つの管』

「問題。『こうじょうせん』とは何?」
「甲府と上野をつなぐ電車?」
「残念。不正解。」

私は「甲状腺癌」と診断されたわけだが、甲状腺とはあまり耳慣れない器官である。

「あなたの好きな身体の器官をひとつ挙げてください。」という人気投票でも、上位には食い込めないだろう。そんなマイナー器官を患うのも、私らしいと言えるかもしれない。

甲状腺は「内分泌系器官」に分類される。分かりやすく言えば、ホルモンを作る器官だ。ヨードという海藻に多く含まれる栄養素を取り込み、新陳代謝をコントロールするホルモンを分泌するのが、その主な役割である。

場所は首。のどぼとけの下、食道に張り付くように存在する。しばしば「ちょうちょのような形」と形容される甲状腺を、「内蔵型蝶ネクタイ」と言ったらかなり過言だ。

甲状腺癌という病名はとてもマガマガしいが、その語感とは裏腹に、ごくまれなケースを除いて非常に進行が遅く、転移もしにくい癌だという。
そこで甲状腺癌はこう表現される。

『おだやかな癌』

なにやら『温厚なやくざ』のようで怖い感じもするが、要するに悪化しにくく、治療しやすい癌ということだ。

さて「ガン宣告」を受けたゴンザだが、数日落ち込んだ後、けっこうさっさと覚悟を決めた。こういう時、「なんで自分が」とか「もっと早く気づけば」などと考えたところで、なんの役にも立たないのである。

幸いにも命がどうのというような状況ではない。不安というのは、おばけといっしょで、正体がよくわからないと大きくなってしまう。状況をしっかり把握し、どんな問題があるのかをきちんと見据え、ひたすら現実的に対処することにした。

まずやったのは、現状を書き出してみること。トラブルがあったときは、それを目に見える形で整理してみるのが一番であり、ゴンザにとっては「書く」ということは自分を整理する最もいい方法なのである。

・自分は甲状腺癌という病気にかかっている。
・甲状腺癌は進行が遅いため、対処方法について時間をかけて考えることが可能である。
・現状、とくに身体に変調はない。
・早期発見とは言えず、ステージ2という状態まで広がっており、ほうっておいてよいレベルではない。
・患部の範囲からして、摘出手術がほぼ唯一の治療手段である。
・命に危険の及ぶ手術ではない。
・位置からして声を出す神経に傷をつけ、声が変ってしまう恐れがある。

ここまで書くと方針が定まってくる。「手術を受ける」それが大前提。ならば腕のいい医師に手術してもらうことで、神経に傷をつけるというリスクを低くするのが、患者としての最良の選択になる。

幸い、ゴンザには強い味方がいた。ゴンザの母方の一族は医者の血筋で、開業医はいないものの、医療研究や管理栄養士、薬剤師のたまごなどがごろごろいるのである。その中でも一番年の近いいとこは、ハーバードの助教授という経歴をもつ医療研究者で、当時ボストンにいた。彼に国際電話で相談を持ちかけ、よい病院を探してもらうことと、医者を紹介してほしい旨をお願いし、同時にゴンザ自身もネットなどを使って情報を集めた。

いとこ曰く、病院選びでまずあてにすべきなのは「症例数」だそうだ。

病院の質は、客観的に測りがたい部分がある。いい評判も悪い評判も、なかなか外に出てきづらい体質があり、また一口に病院の質といっても、手術がうまいとか、診立てが正確とか、心のケアが上手とか様々な側面があり、一概に数直線上に置くことはできない。

そんな中、病院を評価するうえで量的データとしてもっとも簡単なのが、ある病気についてどれくらいの数の患者を診てきているか、という「病院としての経験数」=「症例数」なのである。もちろん多けりゃ単純に安心、というわけではないが、病院選びの指針としては大きい。

特に手術の分野は、言ってみれば「職人芸」の世界なので、同じような手術をどれくらい過去に行っているかでその上手さがまったく違う。脳外科手術のような特殊分野でない限り、多少の才能より経験のほうがはるかに勝る世界なのだそうだ。

最終的に、いとこが紹介してくれた病院は、ゴンザが集めた情報とも一致する、甲状腺疾患を専門に取り扱う東京の有名な病院だった。いとこには、アメリカから方々の知り合いに手を回して、紹介状を作ってもらった。持つべきものは優秀な親戚である。ほんとにありがたかった。

こうして病院を選びながら、ゴンザは会社を休むことについての調整、甲状腺疾患についての勉強、保険の適用条件調査などを進めていた。多少精神的に揺れ動く時期もあったが、表面上かなり平静だったようで、後に「気丈なのにびっくりした」とか「病気を抱えてるのは知ってたけど、癌だとはぜんぜん思わなかった」とか言われたものだった。

当人にしてみれば、体調に異常はないのだし、やるべきことははっきりしていたので、変に考え込んでもしょうがない、というところだったのだが、この割り切り方も、ひょっとすると「医者の血筋」の成せるわざだったのかもしれない。

【つづく】

◆記事目次◆
1-1)『輪切りの私』
1-2)『白衣の天使は実在するか?』
1-3)『センセイになった日』
1-4)『こうじょうせん途中下車の旅』(当記事)
1-5)『オープン・ザ・医療』
1-6)『4つの管』



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2005年12月02日

【医療エッセイ】1-3『センセイになった日』

※これはゴンザが2年前に体験した医療の現場についての連載レポートです。できれば過去の記事からご覧下さい。


◆記事目次◆
1-1)『輪切りの私』
1-2)『白衣の天使は実在するか?』
1-3)『センセイになった日』(当記事)
1-4)『こうじょうせん途中下車の旅』
1-5)『オープン・ザ・医療』
1-6)『4つの管』


残暑厳しい9月半ば、私は清水市立病院に来ていた。東京の病院への転院手続きのためである。

具体的には、検査結果一式をもらうのが目的だ。
検査データ、撮影画像フィルム、主治医所見、紹介状などを、ボール紙でできた大きな書類入れに入れてもらった。

こういった資料を外部に貸し出してもらうのは、昔はなかなか大変だったらしいが、転院やセカンド・オピニオンの一般化により、最近はかなり簡単に出来るようになっている。

┏【医療な言葉:セカンド・オピニオン】┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳ 
┣ second opinion

┣ 日進月歩で研究の進む医学界では、1人の医師、1つの医療機関が
┣ 全ての病気と治療法に精通するのは、現実的に不可能である。
┣ 故に現在の主治医だけでなく、他の医師の意見も求めた方が、
┣ よりよい治療法に結びつく可能性が広がる。
┣ この他の医師、他の医療機関の意見というのが
┣ セカンド・オピニオン、すなわち、第2の意見である。

┗┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻

資料の中には私の一部も入っている。
しこりが見つかった首筋の組織を採取し、プレパラートにした「組織切片」といわれるものが入っているのである。

文字通り、「私の一部」である。
そして私の感覚では「なまもの」である。

これをもらう時、私は聞かずにはいられなかった。
「あの……これ……保存方法とかは……?」

書類を書いていた看護婦さんは、プレーリードッグのようにひょこりと顔を上げ、しばし私と見つめ合った後、そのままの体勢で声をあげた。
「先生ー、これ冷蔵庫とかに入れといたほうがいいんですかー?」

グッジョブ、ナース。
直球すぎる表現に疑問は残るが、それこそ私の聞きたかったことだ。
自分の細胞がいつの間にか腐ってたりするのはとてもイヤなことだ。
しかし家の冷蔵庫の中で、「ユン家のキムチ」と使いかけのベーコンの間にあるのも、それはそれでとてもイヤだ。

ありがたいことに、先生は笑って、
「ああ、大丈夫大丈夫。ちゃんと処理してあるから、常温で。」
と言って下さった。

よかった。たぶん塩漬けにでもしてあるのだろう。

       ◇

重くはないが、その大きさゆえに持ちにくい検査データ一式を抱え、私は病院前からタクシーに乗り込んだ。
「清水インターの高速バスのバス停まで。」

ふー。シートに沈んで外を見る。

正直に言うと、1週間ほど前、自分の病名を告げられた時は動揺した。

甲状腺癌。

ガン? え? 俺ガン患者?
甲状腺? 甲状腺ってなに?

横で身じろぎする両親の気配を感じながら、医者の言葉を混乱する頭で聞いていたのを思い出す。
2〜3日は色々余計なことを考えて、食事もなかなかのどを通らなかったし、眠るのも難しかった。

が、周囲の協力を得て情報を集めたところ、この病気が、病名の印象ほどには危険なものでないことを知り、かなり落ち着いてきていた。

これから転院する病院が、甲状腺癌にかけては日本で指折りの病院であることも、私の安心の助けとなっていた。

(まあ、なんとかなるだろう。)
自分の神経が意外に図太いことを発見して満足していると、運転手さんが話し掛けてきた。

「珍しいですねェ。今日は新幹線じゃあなくて、東名バス使うんですか?」
「え? ええ。これから行くとこが、バスのほうが都合いいんで。」
「そうですかー。」

? 「今日は」? 「珍しい」?
ここからタクシーに乗るのは、初めてなんだけど。
初老の運転手さんの横顔を見ながら、首をかしげた。

「何分のバスに乗ります?」
「えーと、2時15分の東京行きです。間に合いますよね?」
「んー。今の時間なら、大丈夫でしょう。5時過ぎると混んじゃうからわかんないけど。」
「なるほど。」
「東京ですかー。やっぱりお仕事ですか、センセ。」

? 「センセ」って言ったか今?
なんだ? 「ダンナ」みたいな意味か?

「ええまあ……」というような曖昧な返事をしていると、運転手さんはため息をつくように言った。
「大変ですねえ、センセも。」

ここに至って私にもようやく飲み込めた。どうやらこの運転手さん、私を医者だと思っているらしい。

そうか。
Tシャツにチノパンというラフな格好。
抱えた大きな書類ケース。
そして全身から匂いたつ知性。

これらの要素から、運転手さんが私を医者だと勘違いしたとしても、
誰が責めることができようか。
いや誰にもできない。(疑問・反語)

「最近はあれですか、やっぱり患者は年寄りばっかりですか?」

運転手さんの夢を壊してはいけない。私は夢の守り人として振る舞うことを即座に決めた。

「そうですねえ。やっぱり多いですねえ。
 まあ、病院が集会所になってるような部分もありますから。」

「ははぁ。今日はあのじいさん具合が悪くて来てないよ、
 ってやつですか。」
 
「そうそう。
 病院の一つの役割だ、とも言えるんですが、
 それで重い病状の人が待つことになってはねえ。」

「まったくですねえ。」

積極的な嘘はつかない、というコンセプトのもと、転院していく私と運転手さんのニセ医者トークは、ほのぼのと残暑の空に吸い込まれていったのであった。

【つづく】

◆記事目次◆
1-1)『輪切りの私』
1-2)『白衣の天使は実在するか?』
1-3)『センセイになった日』(当記事)
1-4)『こうじょうせん途中下車の旅』
1-5)『オープン・ザ・医療』
1-6)『4つの管』

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posted by ゴンザ at 17:59 | 静岡 ☀ | Comment(3) | TrackBack(0) | 医療エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年10月04日

【医療エッセイ】石との闘いR(第1話/全4話) 発症篇

この記事はシリーズ連載です。できれば最初の記事からどうぞ。

前回シリーズ『石との闘い

今回のシリーズ『石との闘いR』
■目次
 石との闘いR 第1話 発症篇 当記事
 石との闘いR 第2話 衝撃篇(前)
 石との闘いR 第3話 衝撃篇(後)
 石との闘いR 第4話 成果篇


【医療エッセイ】石との闘いR(第1話/全4話) 発症篇

(やつかもしれない。)

そう思ったのは、2002年がもうすぐ終わる頃だった。

腰に感じる鈍い痛み。
ショックを与えると響く背中の重さ。
オレンジ色から赤に近づく尿の色。

あらゆる兆候がやつの出現を示していた。

やつだ。尿管結石だ。

   ◇

「ずいぶん大きくなったねえ。」

私の前にいるのは、親戚のおじさんではなく、近所の泌尿器科の医者である。
腰部レントゲン写真を感心したように見る彼は、競馬解説者の井崎さんを少し真面目にしたような顔をしている。

「前回写した時は5ミリくらいだったのに、1年足らずで、えーと、1.5センチくらいになってるよ。
 よっぽど石が出来やすい体質なんだねえ。」

レントゲンには、すくすく育った白くて丸い影が写っている。
しかし、7ミリほどだった前回より痛くないのはなぜだろう?

「痛いのはね、尿管が石を押し出そうとして痙攣するからなんだよ。
 あんまり大きいと尿管があきらめちゃうんだね。」

なるほど。
私の石の大きさと、私の尿管のあきらめのよさが明らかになった。

「これは、砕かないとダメだねえ。
 紹介状書くけど、どこの病院がいい?」
 
砕く。
結石界で「砕く」と言えば「体外衝撃波結石破砕術」を意味する。

中国奥地の武術の達人が「どーん!」と気を発すると、尿路結石が「パキーン!」と砕け散る、
というイメージだが、まんざら間違いとも言い切れない。

結石治療手術の一種であるのだが、切開を行わない。
機械を使って、体の外側から結石に焦点を絞った衝撃波を送り込み、そのショックで石を砕いて自然排出を促すのである。

分かりやすく言えば、
どーん!て石砕いて砂にしておしっこと一緒に出しちゃおう、
という最先端医療技術である。

……衝撃波。
英語で言うとソニックウェイブ。
必殺技以外で、こんな言葉を聞こうとは思わなかった。

……衝撃波。
日常生活ではあまり使わない言葉だ。
あまり身体に良さそうな感じではない。

……衝撃波。
子供の頃から、衝撃波にはあまりなじみのない生活をしてきた。
だから、衝撃波を当てられるのは好きになれない気がする。

ていうか、すげえ痛そうだ。

私はブルーになった。

「もう病院も年末でお休みになっちゃうから、やるのは年明けだね。
 年末年始どうしても痛くなったら、救急病院に行きなさい。」
 
私はますますブルーになった。

<つづく>

-----------------------------------------------------

前回シリーズ『石との闘い


今回のシリーズ『石との闘いR』

■目次
 石との闘いR 第1話 発症篇 当記事
 石との闘いR 第2話 衝撃篇(前)
 石との闘いR 第3話 衝撃篇(後)
 石との闘いR 第4話 成果篇

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2005年07月22日

【医療エッセイ】石との闘い(第5話/全5話) 治療篇

シリーズ連載記事です。できれば第1話からどうぞ。

■目次
 石との闘い 第1話 発病篇
 石との闘い 第2話 診察篇
 石との闘い 第3話 検査篇(前) 
 石との闘い 第4話 検査篇(後)
 石との闘い 第5話 治療篇   当記事


【医療エッセイ】石との闘い(第5話/全5話) 治療篇

検査後の治療はひたすら地味だった。
検査前も検査中も地味だったが、それをはるかに上回る徹底的な地味さだった。

検査によって、マイ尿管が保有するのは、直径7mmほどのおそらくシュウ酸カルシウムを主成分とする石であることが判明していた。

直径7mmというのは、
「患者が自力でなんとかする」
ぎりぎりくらいの大きさらしい。

「なんとかする」とは具体的にはどうするのか。

1)水分を多く取る。
2)身体をひねる動きをする。
3)なるべく飛び跳ねる。

これらの努力により、尿管に詰まった石をボウコウにまで無事送り届ける、それが我ら尿管結石患者に課せられた使命なのである。

私はノンシュガーミルクティーをがぶ飲みし、モンローウォークをかましながら、ときおり飛び跳ねる怪しい男と化していた。

なぜこんなことをするかは、ホースが詰まったときをイメージすると分かりやすい。
勢いよく水を流し、ホースをひねり、上下に振ってみる。
治療というより「暮らし安心クラシアン」に限りなく近い。

石がボウコウに達することを、玄人は「おちる」と表現する。
ちなみに玄人とは、医者・看護婦・ベテラン患者のことだ。

【「おちる」の用例】
「まあ、おちましたか! おめでとうございます!」
(看護婦Aさんある日の一言)

用例からも分かる通り、「おちる」ことはめでたい。
「おちる」という言葉では稀有な例だ。
尿管結石患者なおかつ受験生という存在が少数であることを願ってやまない。

石がボウコウにまで達すれば、腎臓の痛みや炎症の心配がぐっと低くなる。
たしかにめでたい。

私の場合、たゆまぬクラシアン的努力により、検査してから1週間後くらいにめでたくなった。
あとは体外に排出されるのを待つ。
ぶっちゃけた話、おしっことともに石が出てくるのだ。

この間、ボウコウの中を石が刺激しているらしく、かゆいような、痛いような、くすぐったいような感覚がある。
トイレが近くなるくらいで、それほど日常生活には支障が無い。

石の中には、まれにきれいな宝石のようなものもあるらしい。
自分の中で作られた石は、どのような石だろう。
私のことだから、きっと美しいに違いない。

私はちょっと楽しみだった。
あの激痛の日々を経てきたのだ。
これくらいの楽しみを尿管結石患者が持っても、バチは当たるまい。

定期検診の日が来た。
レントゲンとエコーを当てた医者は言った。
「石は出たみたいですねー。おめでとうございます。」

…………あり?

あれほどまでに私を苦しめた石(直径約7mm)は、その劇的な登場とはうらはらに、静かに舞台を去っていったようだった。

こうして一抹のさみしさを残しつつ、私の闘病生活は幕を閉じた。

    ◇

2年の月日が流れた。

私は社会人になっていた。
寮として与えられたアパートの一室。
ふいに早朝4時頃目がさめた。

!!!
いで!いでででで!
いだだだだだだだだだだ!


やつは、また現われた。
やつは、ひそかに時を待っていた。
やつは、まだあきらめていなかったのだ。

私とやつの闘いは、終っていない。


<おわり>

■あとがき■----------------------------------

というわけで、無事エピソード5まで終了です。
みなさま、おつきあいいただきありがとうございました。

「腎臓・尿管結石」に関して補足させていただきますと、
・20代〜40代の好男子に多い。(→じじいだからなったわけではない)
・石があっても、邪魔な場所でなければまったく問題がない。
・石のできるメカニズムはまだ明らかではないが、
 高い確率で再発するため、体質に依存するものと言われている。
・私の2個目の石は無事おそとに出ている。
・しかしまだ2個ほど腎臓にある。

ということで再発におびえる日々です。

もし私が廊下で飛び跳ねていたら、
「ああ……あれか……あれなのか……」
と暖かい目で見守ってやってほしいと思います。
関係なく飛び跳ねているケースも含めて暖かく。

なお、このシリーズはセカンドシーズン「石との闘いR(全4回)」へと続きます。今度は「体外衝撃波破砕術」なる新しい敵と遭遇します。乞うご期待。

-----------------------------------------------------

■目次
 石との闘い 第1話 発病篇
 石との闘い 第2話 診察篇
 石との闘い 第3話 検査篇(前) 
 石との闘い 第4話 検査篇(後)
 石との闘い 第5話 治療篇   当記事

⇒ 続編の『石との闘いR

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2005年06月29日

【医療エッセイ】石との闘い(第4話/全5話) 検査篇(後)

シリーズ連載記事です。できれば第1話からどうぞ。

■目次
 石との闘い 第1話 発病篇
 石との闘い 第2話 診察篇
 石との闘い 第3話 検査篇(前) 
 石との闘い 第4話 検査篇(後) 当記事
 石との闘い 第5話 治療篇


【医療エッセイ】石との闘い(第4話/全5話) 検査篇(後)

「エコー」は電気ヒゲそりを大きくしたような装置だった。

ポッキーの箱くらいのヒゲそり状のものにケーブルがついていて、モニタ画面のある機械にそれがつながっている。
ヒゲを剃る部分に、超音波を出すのと、読み取るのとをする装置があり、そのデータをモニタに映像化するらしい。

担当したのは適度にお年を召した看護婦さんだった。
ぶっちゃけていえばおばさんだ。
よかった。
若い看護婦さんの前でパンツを半分ずりおろすのはぞっとしない。

下腹部と腰、つまり腎臓からボウコウがあるあたりに
ローションのようなものを塗りつける。
そこにヒゲソリエコーを押し当てる。

まず下腹部にちょっと当てた。
看護婦さんが言った。
「ああ、尿がたまってますね。これなら検査できます。」

なんとなくくやしい。
あんたに俺の何がわかる!と言いたいが、
ボウコウがよくわかることは明らかだった。

腎臓が撮影対象になった。
腰の周りに色々な角度から「ヒゲソリ」を当てて、
モニタを見ながら腎臓の中を探っていく。
時々看護婦さんがピッとボタンを押す。
そこで画像が止まるところを見ると、彼女なりのシャッターチャンスなのだろう。

意外に難しいらしく、あれこれと場所を変え、角度を変え、押し当てる強さを変えている。
彼女なりのカメラマンとしての意地やプライドもあるにちがいない。

姿勢を変えてボウコウがモデルとなった。

看護婦さんがエコーを押し当てる。
ぐっ。


ちょっと待て!
そこは今いい感じに尿がたまっているんだ!
あんたも知ってるはずだろう!
ためてこいって、あんたの仲間が言ったんだし、
あんただってさっき確認したじゃないか!

ぐりぐり。

押すんじゃない!
出てしまうじゃないか!
小学生みたいなことをすなっ!

ぐりぐりぐり。

くっ! 
負けるもんか!
絶対に勝つ! 
左手は、そえるだけ!

 ・
 ・
 ・

私&私のボウコウのチームは、
辛くもナース&エコーチームの攻撃に耐え抜いた。

俺たちは、強い。
無意味な満足感とともに超音波検査は終わった。

検査後のトイレで確認した尿貯蔵量が、
自分のイメージをはるかに下回るものだったことは、
ここでは深く触れないでおく。

<つづく>


■今週の占い■---------------------------------------

牛乳を拭いた雑巾は、すすぐより捨てたほうが無難。
今日はじめての電話の切り際に、「ばかだな。愛してるよ。」と言ってみましょう。
十中八九新しい世界が開けます。
「あるある会員」になっている人は、それでいいのかもう一度見直す契機です。
生き物係には早めに立候補したほうがいいみたい。
東京フレンドパークの視聴者プレゼントがタワシでも、残念がる必要はどこにもないことを忘れないで。

-----------------------------------------------------

■目次
 石との闘い 第1話 発病篇
 石との闘い 第2話 診察篇
 石との闘い 第3話 検査篇(前) 
 石との闘い 第4話 検査篇(後) 当記事
 石との闘い 第5話 治療篇


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2005年06月15日

【医療エッセイ】石との闘い(第3話/全5話) 検査篇(前)

シリーズ連載記事です。できれば第1話からどうぞ。

■目次
 石との闘い 第1話 発病篇
 石との闘い 第2話 診察篇
 石との闘い 第3話 検査篇(前) 当記事
 石との闘い 第4話 検査篇(後)
 石との闘い 第5話 治療篇


【医療エッセイ】石との闘い(第3話/全5話) 検査篇(前)

「尿はたまってますか?」
受付の看護婦さんはにこやかに言った。

「お嬢さん、若い女性のセリフじゃないぜ、そいつは。」
とニヒルに返事をする代わりに、私は
「い、いえ、あんまり。」
とへどもど答えた。

私は尿管結石の精密検査をしに、病院に来ていた。
超音波検査センターという場所である。
ここで腎臓とボウコウのエコー検査を受けるのが目的だ。

エコーというのは超音波を体に当て、その反射音を分析することによって、体内のおよその状況を画像化する装置である。
潜水艦のアクティブソナーに似ている。
レントゲンとちがって害が無いため、最近では胎児の状況を知るためによく使われているらしい。

「尿がある程度たまっていませんと検査ができませんので、
 お水を飲んで、たまったな、と感じたらお声をおかけください。」
看護婦さんはあくまでもにこやかだった。

ある程度、ってどれくらいだろう?
ちょっとしたいかな、くらいでいいんだろうか?
もう少しで漏れそうなくらい必要なんだろうか?

そんな素朴で深刻なギモンも、看護婦さんの笑顔の前では口に出すのがはばかられた。

私はあいまいにうなづき、水を飲みに行った。
ふと見ると「腎臓・ぼうこうのエコー検査を受ける方へ」という貼り紙に、看護婦さんに言われた注意がそのまま書いてあった。
しっかり読んで、あらかじめ尿をためておけばよかった、と唇をかんだ。

     ◇

尿をためてはいけない、という状況はよくある。
だが、尿をためなければいけないという状況は、人生の中でそう多くはない。

私は手探り状態で尿をためていた。
ボウコウに意識を集中しすぎているせいで、わけが分からなくなっていた。
たまっていると言えば、たまっているような気がするし、たまっていないと言えば、まったくたまっていない気もする。
時々下腹部を押してみたりするが、謎は深まるばかりである。

水を飲みに行ってから小1時間。
ボウコウがせつなくなった。ような気がした。

よし。検査を始めてもらおう。

ここで、はたと私は悩んだ。
看護婦さんに何と声をかければよいだろう?

「尿たまりました。」
……ストレートすぎ。
まるで「冷麺はじめました」のようだ。
もっと日本語らしい婉曲な表現が望ましい。

「バッチリです。いつでもいけます。」
……さわやかすぎ。
肩の温まったリリーフ投手ではないのだ。
ボウコウ検査にそこまで積極的にはなれない。

「ボウコウが検査に適した状態になったようです。」
……場慣れしすぎ。
いつの間にそんな訳知り患者になったのだ。
もう少しビギナーらしい初々しさをそこはかとなく漂わせたい。

悩んでいたら、ボウコウが本格的にせつなくなってきた。
まずい。たまりすぎてしまう。

あわてて受付に駆け寄った。

「あの、いけそうなんで、お願いします。」


<つづく>


【正解発表】-----------------------------------------
1号で出題した
「輝け!!ニコル&エリック大王クイズ」の正解発表です。

第1問)C・W・ニコルのC・Wの意味は?
    
Clive Williams Nicolの略です。

第2問)E・H・エリックのE・Hの意味は?
    
Eは、エリックのE。
Hは「日劇ミュージックホール」のH。
H……? ホール……?
    
念のために言っておきますが、マジです。
彼の自伝『元祖「ヘンな外人!」』に書いてあるそうです。

つまり彼のフルネームは
「エリック・日劇ミュージックホール・エリック」。
……なんじゃそりゃあ……。

ちなみに彼は岡田真澄の実兄で本名は岡田泰美(たいび)。
堺正章夫人であった岡田美里の実父。
平成12年8月18日に米ハワイ・マウイ島でパーキンソン病のため死去。71歳でした。


■目次
 石との闘い 第1話 発病篇
 石との闘い 第2話 診察篇
 石との闘い 第3話 検査篇(前) 当記事
 石との闘い 第4話 検査篇(後)
 石との闘い 第5話 治療篇


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2005年06月03日

【医療エッセイ】石との闘い(第2話/全5話) 診察篇

シリーズ連載記事です。できれば第1話からどうぞ。

■目次
 石との闘い 第1話 発病篇
 石との闘い 第2話 診察篇   当記事
 石との闘い 第3話 検査篇(前)
 石との闘い 第4話 検査篇(後)
 石との闘い 第5話 治療篇

【医療エッセイ】石との闘い(第2話/全5話) 診察篇

痛みをこらえながら、私は待っていた。
まだか。まだなのか。
まだ「その時」ではないのか。
ここでどれだけの時を過ごしただろう。
3時間までは覚えている。
その後は時計に目を走らせるのを止めていた。
時を計ることに今さらどれほどの意味があるというのか。

というわけで私は病院の待合室にいた。

診療時間前から来たのに、
「外来・初診」ということで、これでもかと待たされていた。
もうすぐ1時だ。
痛みをこらえた身としては、周りの患者はけっこう元気に見える。
「お前らほんまにどっか悪いんかい! 用無いんなら帰れ!」
と言いたくなる。

「3時間待ちの3分診療」
大病院の問題点を指摘する新聞記事が頭をよぎった時、
ようやく名前を呼ばれた。

     ◇

医者は言った。

「お水をいっぱい飲んで、ナワ跳びをしてください。」

患者は力なく笑った。

5時間近く待った後、尿検査・レントゲン撮影・超音波検査を経て
痛みと空腹を抱えた身に、笑う以外何が出来るというのか。

「尿管結石っていうのはねえ、基本的には石を自分でだすんですよ。
 お水をいっぱい飲んで、尿管につまった石をボウコウに落とすんです。
 ピョンピョン跳ぶと落ちやすい、とも言います。」

現代医療の進歩は、どうやら私が考えている以上らしい。
 
「ビール飲んでナワ跳びして石を落とそう、
 なんて合宿もあるくらいでしてねー。
 あ、アルコールはダメですよ、炎症起こすかもしれませんから。
 あはははは。」

あははははじゃない。

「石が大きい場合、衝撃波を当てて石を砕くっていう方法もあるんですが」

一瞬、腰に「かめはめ波」を当てられる自分の姿が浮かんだ。

「これくらいならなんとか落とせると思うんで、がんばってみてください。
 とりあえずもう少し詳しく調べてみましょうねー。
 来週検査しましょう。水曜日空いてますかー?」

5時間待ちの末に得たのは、「水飲んでナワ跳び」治療法と
抗生物質・尿管を広げるクスリ・痛み止めだった。

痛み止めは坐薬だった。
うめきながらピストルの弾のような薬をおしりに入れる
自分の姿を想像した。

悲しくなった。


<つづく>


■目次
 石との闘い 第1話 発病篇
 石との闘い 第2話 診察篇   当記事
 石との闘い 第3話 検査篇(前)
 石との闘い 第4話 検査篇(後)
 石との闘い 第5話 治療篇


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posted by ゴンザ at 16:08 | 静岡 ☔ | Comment(2) | TrackBack(0) | 医療エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年05月30日

【医療エッセイ】石との闘い(第1話/全5話) 発病篇

これは、ゴンザが今から4〜5年前に仲間内に向けて発行していた私的メールマガジンの転載です。

■目次
 石との闘い 第1話 発病篇   当記事
 石との闘い 第2話 診察篇   
 石との闘い 第3話 検査篇(前)
 石との闘い 第4話 検査篇(後)
 石との闘い 第5話 治療篇

【医療エッセイ】石との闘い(第1話/全5話) 発病篇

それは私が大学生だった時のことである。

普通の人よりちょっと時間がかかったが、
その年どうやら大学を卒業できそうな感触だった。

私は家で卒業論文の構想を練っていた。
日本の将来を案じ、新たな社会のあり方を求めて、
高度な知的作業を孤独に行っていた。

「いつまでもごろごろしていないで、起きて布団干しなさい!
 じゃ、お母さん出かけてくるから!」

日本の未来を担う頭脳に対して気軽に声を浴びせた母は、
スイミングスクールへほいほいと出かけていった。
あいかわらず失礼なことを言う。
私のどこをどうとれば「ごろごろしている」になるのだろう。

パジャマのすそを引きずって居間に行く。
いつものことだが、食事の用意などなかった。
冷蔵庫からいろいろ引っ張り出して適当に食べる。
一人暮らしとあまり変わらないんじゃないだろうか、
とちらりと考えたその時。

痛みが走った。

???
いて。いてててて。

なんだ? 腰が痛い。右の腰だ。
なんか腰を痛めるようなことしたっけ?
えーと、昨日は……。

!!!
いで! いでででで!
いだだだだだだだだだだ!

痛かった。むちゃくちゃ痛かった。
脂汗がにじみだし、背筋に寒気が走る。
とうていじっとしていられない。
手を腰に当てたまま、跳ね回った。
はた目にはちょっと楽しそうなくらいだ。

痛みは1時間半くらい続いた後、すーっと引いた。
やや鈍い感覚が残る程度で、あの激痛がウソのようだ。
おかしい。単なる腰痛ではないらしい。

「家庭の医学」を引っ張り出して読んだ。
ぱらぱらとめくる。
相変わらずブルーな本だ。
自分の体が知らないうちに病気の巣になっているのではないか、という不安をもれなく提供してくれる。

「腰が痛い」というストレートな項から引いてみる。
……あった。
「腰に痛みが走り、悪寒・吐き気などに襲われる。
 痛みは周期的に訪れ、一定時間で去る。」
これに違いない。

病名は……尿管結石。

おしゃれな名前だ。

腰の左右に一つずつある腎臓は、
血液中の老廃物を漉しとるいわば「尿製造機」。
尿管というのは腎臓から「尿タンク」ボウコウへと尿を流す細い管のこと。
腎臓にたまった老廃物がなんらかの作用で固まってできた石が、尿管でつまっている状態がこの「尿路結石」なのだそうだ。

ひとつおりこうになってしまった。

石を押し出そうとする筋肉の運動によって激痛が走り、また、流れが滞ることで内圧の高まった腎臓も痛くなるらしい。
尿に血が混じることもあるそうだ。
そういえば、最近妙に茶色っぽかったように思う。

さし当たっては医者に行って、
この痛みの再発を何とかしてもらわねばならない。
お医者さんなら、何とかしてくれるはずだ。
ていうか、何とかしてくれ。

私は医者に行く決意を固めた。

<つづく>



◇広告◇-----------------------------------------
自分でも知らないうちに、みるみる4ミリバールにアップ!
「予想以上です!」
「やってみてよかった!」
「こんな楽な方法があったなんて!」
など、各方面から喜びの声が届いています。
「4ミリバールとか言って、本当は6ヘクトパスカルくらいなんだろう?」
と疑っていらっしゃるあなた。
いますぐアクセス!
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◆今週の運勢◆-----------------------------------
今週は水曜日〜金曜日の期間ですので、もうすぐ終わりです。
短いですが、火曜日だけしかない来週よりはましです。
ラッキー体操は、ラジオ体操第二。
夜寝る前に、曲の途中まで汗ばむくらい真剣にやってみれば、初対面のあの人から「ひねくれてるね」と言ってもらえるかも。
C・W・ニコルのC・Wが何を意味しているのか知らない人は、E・H・エリックのE・Hくらいは調べておきましょう。
アメリカのやり方は、間違っています。
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■目次
 石との闘い 第1話 発病篇   当記事
 石との闘い 第2話 診察篇   
 石との闘い 第3話 検査篇(前)
 石との闘い 第4話 検査篇(後)
 石との闘い 第5話 治療篇


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posted by ゴンザ at 15:27 | 静岡 ☔ | Comment(0) | TrackBack(0) | 医療エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年12月03日

【医療エッセイ】1-2『白衣の天使は実在するか?』

※これはゴンザが2年前に体験した医療の現場についての連載レポートです。できれば過去の記事からご覧下さい。


◆記事目次◆
1-1)『輪切りの私』
1-2)『白衣の天使は実在するか?』(当記事)
1-3)『センセイになった日』
1-4)『こうじょうせん途中下車の旅』
1-5)『オープン・ザ・医療』
1-6)『4つの管』
------------------------

結局、私は入院することになった。

CTスキャンやエコー、細胞診、MRIなどの検査の末、
「結核による腫れの疑いが強いが、確定させるため組織採取を行う」
ということだった。
つまりは首のしこりを、1センチ四方程度切り取って、顕微鏡で見てみましょう、というわけだ。

そんな人の身体をサイコロステーキみたいに、と思ったが仕方がない。
その夏の終わりは病院で過ごすこととなった。

切る部位が比較的首の表面のほうだったので、手術自体はどうということもなかった。
ダメージも深くなく、3日もすればヒマを持て余した。
そこで病院内を観察することにした。

観察の主たる対象は「白衣の天使」である。

  ◇

白衣の天使。
言うまでもなく看護婦さんのキャッチフレーズだ。

もっともこの「看護婦」という呼称自体、一種の愛称である。
現在、正確には「看護師」という。

┏【医療な言葉:看護師(かんごし)】┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳

┣ 以前は女性の看護エキスパートは「看護婦」、
┣ 男性の看護エキスパートは「看護士」と呼ばれていた。

┣ 男性看護士の占める割合は現在およそ5%程度。
┣ 看護の現場は、高度な知識を要する専門職の世界であるが、
┣ 物理的な筋力が不可欠となる場面も多く、
┣ 男性看護士の必要性は昨今重視されてきている。

┣ そんな中、ジェンダーフリーの面、呼称の利便性の面などから、
┣ 共通した呼称をもつべきである、という動きが起き、
┣ 平成13年12月に成立した保健婦助産婦看護婦法改正により、
┣ 男女の区別なく『看護師』と呼ばれるようになった。

┗┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻

それはさておき、「白衣の天使」はやはり男性入院患者にとっての夢であり、漢の浪漫である。

純白の衣に身をつつみ、回診表を胸の前に抱え、「いかがですか?」とやわらかく微笑む妙齢のあたたかな女性。
漢というものは、そんな自分の中で作り上げた情景に、臆面もなくソフトフォーカスをかけてしまったりするのだ。

しかし、敢えて言おう。
「白衣の天使」は想像上の生物だ。
龍や麒麟、ユニコーンやペガサス、NOVAうさぎのようなものだ。

「白衣の天使」を探して病棟内を見回したあなたが見つけるのは、「白い服着た体育会系ゴーカイねえちゃん」である。

ベッドで横になっていると、ゴーカイねえちゃんは、ぱたぱたぱたと早足でやってくる。
そしてこちらを見て、にっと笑い、開口一番言う。

「おしっこ出た? 何回?」

嗚呼、天使はいずこ?

実際の看護婦さんというのは、その夢のイメージとは違って、みなさん豪放磊落で男前な人々なのである。
「あはははは!」と色んなことを笑い飛ばせる元気な肉体労働者なのである。


しばらく入院していて感じたのだが、看護婦さんの言葉使いというのは独特だ。

「ご飯食べた〜? うん、全部食べたね〜。えらいっ。」

「お風呂入る? 先生いいって言ってた?」

「おしっこは出た? 何回? お通じは? お熱、はかった?」

どう考えても同年輩、もしくは年下と思しき女性からこのような言葉をかけられ、私は
「はい、7回と1回です。おかげさまで36度4分でした。」
と神妙に答えているわけだ。

想像するに、

・適度にフレンドリーな口調。
・年代を超えて通用する共通の語り口。
・相手に恥ずかしいと思わせない空気。

というものを追求していった結果、幼稚園児に話し掛けるようなあの言葉使いが出来たのだろう。

看護婦さんというのは、つくづく大変な職業だと思う。
過酷な肉体労働であり、高度な知的労働である。
汚れ物を扱いつつ、生死をも扱う責任の重い仕事である。
精神的にかなり骨太でないとやっていけない。

そして、入院患者というのは、わがままな存在だ。
普段わがままでない人も、不安からわがままになりがちだし、普段わがままな人はそのわがままっぷりがパワーアップする。

ボタンを押すとナースステーションに通報がいく「ナースコール」というものがあるが、私の近くの病室には、この文明の利器を使うことを頑なに拒否する迷惑なオッサンがいた。
と言っても「呼ばずに我慢する」のではない。
そんなかわいい患者ではない。

深夜。寝静まる病棟内に、突然ダミ声が響き渡る。
「看護婦さぁーん! 看護婦さはぁーん!」

……なんでやねん。

パタパタパタと駆けつけるスリッポンの足音を聞きながら想像する。

「あたしたちゃアンタのお母さんじゃないっつうの!」
とか思っているんだろうな。
場合によっては叱りつけているんだろうな。
オッサン、アンタが悪い。いいかげんにしとき。
それだけでかい声がでりゃ、大丈夫だろ。

付き合っていられないので、
ごそごそと枕を直してから寝なおすことにする。
パタパタという足音が近づいてくる。
ああ……オッサンのところから戻ってきたのかな……
と思っていると、懐中電灯の光とともに声をかけられた。
「どうしました?」

へ? な、なにが?

嫌な予感に襲われて枕元を見ると、ナースコールが転がっていた。
……やばい。枕を直した時にうっかり押してしまったらしい。
えーとえーとえーと……。

「……寝づらいんで、ちょっとベッド起こしてもらえます?」
「はい。」
看護婦さんは嫌な顔ひとつせずにベッドの角度をくるくると上げ、「これくらいでいい?」とにっこり戻っていった。

明らかにさっきより寝づらい角度になってしまった
ベッドの上をずり落ちながら、私は思った。

やはり白衣の天使は実在するのだ。

【つづく】

◆記事目次◆
1-1)『輪切りの私』
1-2)『白衣の天使は実在するか?』(当記事)
1-3)『センセイになった日』
1-4)『こうじょうせん途中下車の旅』
1-5)『オープン・ザ・医療』
1-6)『4つの管』


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posted by ゴンザ at 20:41 | 静岡 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | 医療エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年11月22日

【医療エッセイ】1-1『輪切りの私』

※これはゴンザが2年前に体験した医療の現場についての連載レポートです。できれば過去の記事からご覧下さい。


◆記事目次◆
1-1)『輪切りの私』(当記事)
1-2)『白衣の天使は実在するか?』
1-3)『センセイになった日』
1-4)『こうじょうせん途中下車の旅』
1-5)『オープン・ザ・医療』
1-6)『4つの管』


私は半口開けて、「MRIとは?」なる案内板を眺めていた。
ここは病院の一角である。

首筋に出来た小さなしこりに気づいたのは3年ほど前だった。
痛いわけでも、熱が出るわけでもなく、特に不都合がなかったため放っておいたのだが、風邪をひいて医者に行った時、ついでに軽く相談してみた。

すると、威勢のいい女医さんに
「こういうのはね、ちゃんと調べとかなきゃダメ!」
と怒られ、しぶしぶ有給休暇をつぶしての検査に至ったのである。

しこりの正体を確かめるべく、病院でCTスキャン・エコーなどの検査を続けてきた私の次なる相手が、この未知なるハイテク・MRIなるものなのである。

┏【医療な言葉:MRI】┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳┳
┣ Magnetic Resonance Imaging(磁気共鳴画像)

┣ ドラマの病院シーンでよく見る「人体の輪切り画像」を撮る装置。
┣ 強い磁場の中に置いた人体に、一定周波数の電波を当てると、
┣ 体内の水・脂肪に含まれる『水素原子核』が共鳴し、一定方向を向く。
┣ 電波を切るとばらばらの方向へと戻るが、
┣ その際に細胞組織によって異なる微弱な電波を生ずる。
┣ MRIはその電波を解析して体内の状況を画像化する技術である。
┣ 似たような「輪切り検査」にCTスキャンがあるが、
┣ CTはX線検査の1つであるため、人体に悪影響がある。
┣ MRIの電磁波は現在「有害である」という証明はされていない。
┣ しかし、「無害である」という証明もされていない。

┗┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻

……むむう。
磁気と電波によって、水にエネルギーをかける……。
それって、電子レンジでチンされる、ということだろうか?
「指輪など金属類はお外しください。」と注意書きがあるのも、電子レンジとアルミホイルの関係を彷彿とさせる。
大丈夫なんだろうか。

名前を呼ばれた私は、びゅーびゅーと臆病風に吹かれながら入室した。

    ◇

MRIは、白くて、長くて、大きかった。
オフホワイトのでかい機械に、土管のような筒状の穴が開いていて、その前に寝台が
「いらっしゃいませこんにちは!」
とばかりにスタンバっている。

私はTシャツとパンツ姿になり、
その上からハッピを長くしたような検査着を羽織った。
検査着の下からにょっきり出ている黒い靴下がラブリィだ。

寝台におずおず近づくと、看護婦さんが「あ、これを」と何かくれた。

……なにこれ、耳栓?

「こちらの機械、検査中うるさいんで、これを入れてください。
 入れてもけっこううるさいんですけどね。」
看護婦さんは、あははと笑った。
つられて私も、はははと笑った。

耳栓を入れると看護婦さんがうれしげに「どうですかー?」と聞いてくる。
思ったよりもちゃんと聞こえるので、笑顔でうなずき返した。

看護婦さんとの友好度はアップしたが、耳栓への信頼度はダウンした。

「はいここに仰向けに寝てください首はここ
 もちょっと上かなそうそういいですねはい固定しますねー」

何が何やらわからないうちに、おでことあごの部分が、ベルトのようなもので固定されてしまった。
つかまった宇宙人の気分だ。

下半身にタオルケットをかけられて、いよいよ検査である。
寝台がするすると、そしてゆっくりと白い穴に近づいていく。

♪たったかたーたかたったたったかたったったー

私は頭の中で「サンダーバードのテーマ」を鳴り響かせながら、MRIの穴の中に入っていった。

 ◇

(せまっ!)
MRIの内部に入った私の感想である。

想像以上に狭い。
筒の中は人一人がやっと入れるくらいのスペースしかない。
パパイヤ鈴木は入れないかもしれない。

鼻先5センチくらいのところに天井がある。
ものすごい圧迫感。
閉所恐怖症の人間には到底耐えられないだろう。
棺おけに入れられた気分だ。

「はーいそれじゃ検査始めますよー。」
筒の中にあるらしいスピーカーから、技師さんの声が聞こえる。
「もし気分が悪くなったりしたら、これを握ってください。」
とゴム製のレモン形のものを、右手につかまされた。
血圧を測る時に空気を入れる「しゅぽしゅぽ」と同じようなものらしい。
もっとわかりやすく言えば
「カエルがぴょんと跳ぶおもちゃのしゅぽしゅぽ部分」である。

……これを握ると、どのようなことが起こるのだろう?
まさか「握ると安心」という癒し系グッズではあるまい。
おそらく機器のランプが付くなり、音がするなりして、「どうしました?」と技師さんと看護婦さんが来てくれるのだろう。

だが、私の頭の中には、
「握ると『ぷぴー』という音とともに私の足元でカエルがぴょんと跳び、
 それを眺めてほのぼのと笑う技師さんと看護婦さん」
という絵しか浮かんでは来なかった。

ガンガンガンガンガンガンガンガンガン。
ごいんごいんごいんごいん。
ガッガッガッガッガッガッガッガッガ。

……なるほど、看護婦さんの言葉は正しかった。
とてもうるさい。
筒の周りからまんべんなく騒音がする。
工事現場の金属管にもぐり込んで出られなくなった猫の気分だ。

15分ほどのヘヴィメタルな時間が過ぎた後、突然音が止まった。
スピーカーから技師さんの声。
「いったんお休みしますねー。楽にしてくださーい。」

いや、そんなインターバルいらんから。
ぎちぎちの筒の中に「気をつけ」の姿勢で入れられて、おでことあごをベルトで固定されて、鼻の頭をかくのを我慢している男に、どういう顔して「楽にしてくださーい」と言っとるんだあんたは。

検査再開。
ガッガッガッガッガッガッガッガッガ。
ゴンゴンゴンゴンゴン……
ごいんごいんごいんごいん……

「はい、おわりでーす。お疲れ様でしたー。」
技師さんの声に私ははっと我に返った。自分でも信じられないことだが、私は寝ていた。
あの状況下で。
人間の適応性というのは、げにすばらしいものである。

足にかけたタオルケットをとると、私はびっしょりと汗をかいていた。
それこそ、湯気が出るくらいに。

「暑かったですか?たまにそういう方いらっしゃるんですけど。」
首をかしげる看護婦さんにうなづきつつ、私は思った。

やっぱりこれ、電子レンジだ。

【つづく】

◆記事目次◆
1-1)『輪切りの私』(当記事)
1-2)『白衣の天使は実在するか?』
1-3)『センセイになった日』
1-4)『こうじょうせん途中下車の旅』
1-5)『オープン・ザ・医療』
1-6)『4つの管』

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posted by ゴンザ at 17:08 | 静岡 ☁ | Comment(5) | TrackBack(0) | 医療エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする