ゴンザのゴザンス投稿作品を振り返るシリーズの第8回目です。ゴンザとゴザンスの関係について知らない方はこちらをご覧くださいませ。
さて、他の記事でも書いている通り、文芸競作サイト「ゴザンス」には、大きな3つのジャンルがありました。
1)テーマ投稿 「卒業・別れの季節」というような一定のテーマに沿った文章を書く。
⇒例「Yちゃんお土産戦記」
2)800字小説 「引越しの日/公園で/小学生が」といった形で提示される3つのキーワードを全て織り込んで、800字以内のショートショートを作る。
⇒例「人待ちの情景」
3)ことばあそび 「しづこころなくはなのちるらむ」のような一連の言葉が提供され、その言葉を文頭に一文字ずつ使うなどした「あそびの文章」を構築する。
⇒例「よるのふね」
さてさて、以上を踏まえた上で、今回の作品「おまわりさんの悩み」をご覧下さい。
【テーマ】【800字】【ことばあそび】おまわりさんの悩み(2004-09-12 21:36:32)
text: ゴンザ
<テーマ:キミが嘘をつくなんて>
<800字お題:花見の日に/駅前通りで/おまわりさんが>
<ことばあそび:さくらがさいたらあそびにおいで>
(さすがに、この時期に駅前通りを突っ切ろうってのは無謀だったか……。)
車の外はまるで歩行者天国であるかのように、たくさんの花見客がぞろぞろ歩いていて、僕の愛車は当分ここから抜け出せそうにない。
ランチボックスを抱えた若い女の子が、彼氏と一緒にフロントガラスの前を横切るのを見て、僕はいずみのことを思い、すこしブルーになった。
学生時代の友人の結婚式で知り合った彼女とは、つきあい出してまだ数ヶ月だが、僕はいずみに秘密にしていることがあった。
(「サラリーマンです」だなんて、どうしてあんなウソついちゃったんだろう。)
今考えるとなぜあんなことをしたのか分からないのだが、僕は「警察官」という自分の職業を打ち明けずに、彼女とつきあい始めてしまい、そのまま現在に至っているのだ。
ただ、それももう限界で、今日のように僕が週末非番でも、彼女の都合が悪くて会えないという日々が続いており、そろそろ正直に話さなきゃという思いが僕の胸に重くのしかかってる。
(来週もう一度デートに誘って、その時「実は俺、おまわりさんやっててさあ!」と軽く言ってみようか……?
案外「え、そうなんだ」って受け入れてもらえるかもしれないし……。)
そんな虫の良すぎる考えに沈んでいると、突然窓ガラスがコツコツと叩かれ、「すいません!この先を左折して、ここから抜けてしまってもらえますか?」と声をかけられた。
びっくりして目を向けると、窓の外に見慣れた婦警の制服が立っているのが見えた。
(日曜だってのに、花見客の交通整理に駆り出された不運な子か……かわいそうに。)
お疲れさま、とでも言ってあげようと、窓から顔を出した僕は、次の瞬間愕然と目を見開いているその婦警と見つめ合っていた。
「いずみ……お前……OLだって言ってなかったっけ……?」
出会った時に感じた親近感はこのせいだったのか、とどこかで妙に納得している僕の鼻の頭に、桜の花びらが一枚貼りついた。
<自分で解説>
えーと。意味がわかっていただけましたでしょうか。これは本来別々で与えられたお題である
1)テーマ「キミが嘘をつくなんて」
2)800字「花見の日に/駅前通りで/おまわりさんが」
3)ことばあそび「さくらがさいたらあそびにおいで」
をひとつの文章ですべて満たしてしまおう、という試みです。
1と2の条件がクリアされているのは、あきらかですね。花見の日の駅前通りで、おまわりさんが彼女についてしまった嘘に悩んでいたら、なんと彼女も嘘をついていた、ということで「キミが嘘をつくなんて」。
3については、各文の文頭の音を拾ってみてください。1文目の「さすがに」2文目の「くるまの」3文目の「ランチボックスを」……と続けていくと、最後に「さくらがさいたらあそびにおいで」が出来上がるわけです。
このショートショートは物語としての展開がどうというより、ほとんど文章を使った曲芸。そういう意味ではまさしく「文芸」(うまくないうまくない)。自縄自縛の状態から大脱出をはかるタイプの手品だと思っていただければ幸いです。
全部の要素をバランスよく配置して破綻させず、なおかつひとつのお話として完成させるという作業がなかなか大変でした。テーマと800字のキーワードから「おまわりさんが嘘をつくことにしよう」という発想と、「嘘をついた相手も同じ嘘をついていたことにしよう」というオチはすぐに思いついたのですが、文頭に使える文字が限られるのやっかいでした。特に2回もでてくる「ら」と、後半の「び」が言うことを聞いてくれません。「び」で始まる言葉なんて、あんまりなくて……。春だから「鼻炎」にしようかとか色々悩みました。
お話をつむぐというよりは、クロスワードパズルを作るような感覚で書いた覚えがあります。苦労した甲斐があって、けっこう綺麗にまとまり、自分では気に入っている作品です。
2005年03月29日
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文章を書くのは、苦手ではありませんでしたが、テーマがあり、文字数が決められ、
その上ことばあそび…
いくら時間があっても無理だぁ〜って感じです。
さっと情景が浮かんで、自然に話の中に入っていけるんですよね、ゴンザさんのお話。
それだけでなく、ことばあそびまで…
ホント、すごい!
文章を書くのが好きな人にも、センスで書く人、リズムで書く人、知識で書く人、色々タイプがあると思うんですが、ゴンザはたぶん「理屈で書く人」です。パズルみたいに、部品を揃えてからそれを理詰めで組み合わせていくんですね。
だからこういうトリッキーなものは得意なんですが、逆に意外な言葉の組み合わせを楽しむセンス勝負の文章だとかは、苦手だったりします。
むむむむむ。文章って難しい。